債権は遺産分割できますか?

債権は遺産分割の対象になるのか?

相続財産の中には、不動産や預貯金だけでなく、
**貸金返還請求権などの「債権」**が含まれることがあります。

では、これらの債権は遺産分割の対象となるのでしょうか。

債権も遺産分割の対象となります

結論から申し上げると、
債権は遺産分割の対象となります。

相続開始と同時に、被相続人が有していた債権は相続人全員の共有状態となり、
遺産分割協議により、

  • 特定の相続人が単独で承継する

  • 持分割合に応じて分割承継する

といった取り扱いを定めることが可能です。


債権の遺産分割と「対抗要件」の問題

ただし、債権の遺産分割は、
法律上は「債権譲渡」と同視される側面があります。

そのため、
「誰がその債権を取得したのか」を
**債務者や第三者に主張するための要件(対抗要件)**が問題となります。


対抗要件とは何か

対抗要件とは、
「当事者間だけでなく、第三者に対しても権利関係を主張できる状態」
にするための法律上の要件をいいます。

債権譲渡(=債権の遺産分割)における対抗要件は、
民法第467条に定められています。


民法第467条(債権譲渡の対抗要件)

第467条
1 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

※ 本条は、2017年の民法(債権法)改正後も基本的な構造は維持されています。


対抗要件の具体的内容

① 債務者に対する対抗要件

債務者に対して債権取得を主張するためには、
次のいずれかが必要です。

  • 債務者への通知

  • 債務者の承諾

これがなければ、
債務者は「誰に支払えばよいのか分からない」として、
支払を拒むことが可能となります。


② 債務者以外の第三者に対する対抗要件

さらに、
他の相続人や、二重譲渡を受けた第三者など
債務者以外の第三者に対抗するためには、

  • 「確定日付のある証書」による通知または承諾

が必要となります。


確定日付とは何か

「確定日付」とは、
その日付にその文書が存在していたことを公的に証明できる日付
をいいます。

代表的な例としては、

  • 内容証明郵便による通知

  • 公証役場で確定日付を付した書面

などがあります。


実務上の注意点(判例の考え方)

指名債権が二重に譲渡された場合には、
「どちらが先に確定日付ある証書による通知を到達させたか」
によって優劣が決するとするのが判例の立場です。

そのため、
遺産分割協議によって債権を取得した相続人は、
できるだけ早期に、確定日付ある方法で債務者へ通知すること
が実務上、極めて重要となります。


まとめ

  • 債権は遺産分割の対象となる

  • ただし、債権の承継は「債権譲渡」と同様に扱われる

  • 債務者・第三者への対抗要件を備えなければ、権利行使ができない場合がある

  • 実務では「確定日付ある通知」が極めて重要

債権を含む相続案件では、
遺産分割協議書の記載方法や、通知の方法を誤ると、
後日の紛争につながるおそれがあります。