寄与分がある場合の遺産分割と実務上の考え方
相続の基礎的な考え方については別途解説しておりますが、
相続相談の現場で特に話題となるのが、寄与分がある場合の遺産分割です。
寄与分とは、
共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の貢献をした者がいる場合に、 その貢献を相続分に反映させる制度です
(民法第904条の2)。
■ 寄与分として認められやすい典型例
寄与分の算定において最も重要なのは、
どの程度の寄与が、どのくらいの金額評価に値するかという点です。
比較的評価しやすい寄与分としては、次のようなものがあります。
1.被相続人の事業が傾いた際に、資金援助を行った場合
2.被相続人の自宅購入にあたり、頭金等を負担した場合
これらは、
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支出額が明確
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客観的な資料(振込記録、契約書等)が残っている
ことが多く、寄与分として認められやすい傾向にあります。
■ 介護による寄与分評価の難しさ
一方で、実務上最も判断が難しいのが、
3.被相続人が寝たきりとなった際に、
自宅で父または母の介護・看病を行った場合
です。
近年では、
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介護ヘルパーを利用した場合の費用
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介護保険サービスの報酬基準
などを参考に金額換算する例も見られますが、
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24時間介護
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精神的負担
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家族として通常期待される扶養・扶助との線引き
といった点から、一律の基準を設けることは非常に困難です。
そのため、
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相続人間の協議で合意できれば問題ありませんが
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合意に至らない場合には、
家庭裁判所の遺産分割調停・審判に委ねることになります。
■ 寄与分がある場合の相続分計算例
寄与分の計算方法は、実務上誤解されやすい点ですので、
具体例で確認してみましょう。
【前提条件】
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相続人:長男・長女の2人
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法定相続分:各2分の1
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相続財産総額:1,000万円
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長男の寄与分:200万円
【計算手順】
① まず、相続財産総額から寄与分を控除します
1,000万円 − 200万円 = 800万円
② 残額800万円を、法定相続分どおり分割します
800万円 ÷ 2 = 各400万円
③ 寄与分のある相続人に、寄与分を加算します
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長男:400万円 + 200万円 = 600万円
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長女:400万円
■ 寄与分計算の基本構造
整理すると、寄与分の計算は次の流れとなります。
1.相続財産総額から寄与分を控除
2.残額を法定相続分で分割
3.寄与分を有する相続人に、その金額を加算
この点を誤ると、
他の相続人の相続分を直接減らすような誤解につながりますので注意が必要です。
■ 実務上の注意点
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寄与分は当然に認められるものではない
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被相続人との身分関係から通常期待される行為は、原則として寄与分に含まれない
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客観的資料の有無が極めて重要
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寄与分を主張する側に立証責任がある
寄与分を巡る争いは、
相続人間の感情的対立を激化させやすい分野です。
■ まとめ
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寄与分は民法に基づく法定制度
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金銭的援助は評価しやすい
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介護による寄与分は判断が難しい
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合意できなければ家庭裁判所で判断
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正確な計算手順の理解が不可欠
寄与分を主張する場合も、
また寄与分を主張される立場であっても、
早期に専門家へ相談し、冷静な整理を行うことが重要といえるでしょう。
