相続開始後に発生した賃料の法的取扱いと実務対応
相続開始後、遺産分割が成立するまでの間に、
被相続人名義の不動産から発生した賃料収入は、
原則として相続財産(遺産)そのものには含まれません。
この点については、
賃料債権は相続開始と同時に可分債権として各相続人に法定相続分どおり帰属する
というのが、現在の判例・実務の考え方です
(最判平成28年12月19日ほか)。
■ 相続開始後の賃料は「当然分割」される金銭債権
相続開始後に発生する賃料は、
- 遺産分割を待たず
- 相続開始と同時に
- 各相続人が法定相続分に応じて当然に取得
する**金銭債権(可分債権)**と位置付けられます。
そのため、賃料自体は、
遺産分割協議の対象とはならないのが原則です。
■ 相続人全員の合意があれば「遺産分割の対象」にできる
もっとも、
共同相続人全員の合意がある場合には、
- 相続開始後に発生した賃料を
- 他の遺産と併せて
- 遺産分割の対象に含める
という取り扱いも可能です。
この場合には、
- 相続人全員で遺産分割協議を行い
- 遺産分割協議書を作成
- 全員が署名し、実印で押印
する必要があります。
※一部の相続人のみの合意では足りません。
■ 対象となる不動産の範囲
この取扱いは、
- マンション
- アパート
- 戸建賃貸
- 店舗・事務所等
すべての賃料を生む不動産に共通します。
建物の種類による法的な違いはありません。
■ 実務上の最大の論点:収益不動産の評価方法
実務で問題となるのは、
賃料が発生している不動産を
どのような評価額で遺産分割するか
という点です。
収益不動産については、
- 相続人間での管理負担
- 将来の修繕・空室リスク
- 管理方針を巡る対立
といった問題が生じやすいため、
遺産分割を円滑に進める観点から、売却を前提とした評価が採用されるケースが多くあります。
■ 売却前提評価における実務的な考え方
売却を前提とする場合には、
- 想定売却価格
- 譲渡所得税・住民税
- 建物解体費用(古家がある場合)
- 不動産仲介手数料
- 測量・登記関係費用
など、売却に要する一切の費用を控除した残額を、
実質的な相続財産額として評価することが一般的です。
これは、
実際に相続人が取得できる経済的価値に即した評価方法といえます。
■ 不動産評価の正確性確保について
もっとも、不動産評価は、
- 相続人間の紛争防止
- 後日の税務調査対応
- 他の相続財産との公平性確保
の観点から、客観性と合理性が強く求められます。
そのため、当事務所では、
不動産鑑定士による鑑定評価を依頼し、
適正かつ中立的な評価額を基準として遺産分割を進めています。
■ まとめ
- 相続開始後の賃料は原則として遺産に含まれない
- 賃料債権は可分債権として法定相続分どおり帰属
- 相続人全員の合意があれば遺産分割の対象にできる
- 収益不動産は売却前提評価が実務上多い
- 評価の客観性確保のため鑑定評価が有効
相続開始後の賃料や収益不動産の取扱いは、
理論と実務のずれが生じやすい分野です。
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