生命保険金は遺産分割の対象になるのか?
父が亡くなり、生命保険の受取人が自分に指定されていました。
ところが、他の兄弟から、
生命保険金も相続財産なのだから、平等に分けるべきだ
と言われることがあります。
このような相談は、相続の現場では非常に多く見られます。
では、生命保険金は遺産分割の対象となるのでしょうか。
■ 原則:受取人指定のある生命保険金は相続財産ではない
結論から申し上げると、
生命保険契約において、特定の者が保険金受取人として指定されている場合、その生命保険金は相続財産には含まれません。
この点については、
最高裁判例においても、生命保険金は
- 相続人として取得するものではなく
- 保険契約に基づき
- 受取人固有の権利として取得する財産
であると明確にされています。
したがって、
原則として生命保険金は遺産分割の対象とはならず、分ける義務もありません。
■ 判断のポイントは「保険金受取人が誰か」
生命保険金が相続財産に該当するかどうかは、
保険金受取人が誰に指定されているかによって決まります。
- 受取人が特定の相続人 → 相続財産ではない
- 受取人が第三者 → 相続財産ではない
一方で、注意すべきなのが、
- **受取人が「被相続人本人」**とされている場合
です。
この場合、保険金請求権は被相続人の死亡時点で相続人に承継され、
生命保険金は相続財産として遺産分割の対象となります。
■ 遺留分との関係(補足)
なお、生命保険金は相続財産ではありませんが、
その金額や事情によっては、
- 著しく高額である場合
- 他の相続人との公平を著しく欠く場合
には、
特別受益類似として遺留分侵害額請求の対象となる可能性があります。
この点は、金額・契約内容・相続関係等を踏まえた
個別具体的な判断が必要となります。
■ 保険金・解約返戻金の実務上の取扱い
生命保険の取扱いは、
銀行預金の相続手続きとは異なる点が多くあります。
一般に銀行では、
- 預金が1円でも残っていれば
- 原則として相続人全員の同意(遺産分割協議書等)
を求められることが多いのに対し、
保険会社では、
- 一定額(例:500万円以下など)まで
- 代表相続人の実印・印鑑証明書のみ
で解約や支払手続きが可能なケースもあります。
■ 代表相続人による手続きの注意点
もっとも、保険の解約や保険金請求を
代表相続人が単独で行う場合、
- 他の相続人との間でトラブルが生じた場合
- 後日、権利関係に争いが生じた場合
には、
代表相続人が一切の責任を負う旨の誓約書の提出を求められることが一般的です。
そのため、形式的に手続きが簡略化されているからといって、
安易に進めるべきではありません。
■ まとめ
- 受取人指定のある生命保険金は原則として相続財産ではない
- 保険金は受取人固有の財産
- 受取人が被相続人本人の場合は相続財産となる
- 高額な場合は遺留分との関係に注意
- 保険手続きは簡便でも責任は重い
生命保険金を巡る問題は、
「遺産ではないが、紛争にはなりやすい」分野です。
