香典や遺骨も遺産分割の対象か?

香典・遺骨・墓・仏壇は遺産分割の対象になるのか?

父の葬儀において、長男である私が喪主を務めました。
ところが、弟から、

香典や遺骨、墓や位牌、仏壇についても、自分には相続権があるはずだ

との主張を受けました。

これらは、果たして遺産分割の対象となる相続財産なのでしょうか。


■ 香典の法的性質について

まず、香典についてですが、
香典は一般に、

  • 葬儀費用等の負担を軽減するため
  • 相互扶助の精神に基づく社会的慣行

として、喪主に対して贈られる金銭と解されています。

このため、香典は、

  • 被相続人の財産ではなく
  • 相続開始時に存在していた財産でもない

ことから、相続財産には該当しません

実務上も、香典は「喪主に対する贈与」と整理され、
他の相続人が分配を請求する権利は認められていません。


■ 香典の残金の使途について

香典を葬儀費用に充てた結果、残金が生じた場合についても、

  • 今後の法要・祭祀費用に充てる
  • 社会福祉団体等へ寄付する

など、その処分は喪主の裁量に委ねられるとされています。

他の相続人が、香典残額について権利主張をすることはできません。


■ 祭祀財産は相続財産ではない

次に、位牌・仏壇・墓地・墓石・系譜(家系図)などについてです。

民法第897条は、

系譜、祭具および墳墓の所有権は、相続の対象とならず、
先祖の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する

と定めています。

この条文に基づき、

  • 位牌
  • 仏壇
  • 墓地・墓石
  • 系譜

といった祭祀財産は、相続財産ではなく、遺産分割の対象にはなりません。


■ 祭祀主宰者とは誰か

祭祀財産を承継する「先祖の祭祀を主宰すべき者」は、

  • 被相続人の指定
  • 慣習
  • 家庭裁判所の判断

によって定められます。

実務上は、

  • 喪主を務めた者
  • 被相続人と生前同居し、祭祀を継続してきた者

が祭祀主宰者と判断されるケースが多く見られます。


■ 遺骨の取扱いについて(判例)

最後に、被相続人の遺骨についてです。

遺骨については、
被相続人の所有物とはいえないとするのが判例・実務の立場です。

過去の裁判例においても、

  • 遺骨は相続財産には該当せず
  • 祭祀を主宰すべき者に帰属する

と判断されています。

したがって、
遺骨についても遺産分割の対象にはならず、相続人全員で分けるものではありません。


■ まとめ

  • 香典は喪主への贈与であり、相続財産ではない
  • 香典残額について他の相続人に分配請求権はない
  • 位牌・仏壇・墓・墓地等は民法897条の祭祀財産
  • 祭祀財産は相続財産ではなく、遺産分割の対象外
  • 遺骨も相続財産にはならず、祭祀主宰者に帰属する

香典や祭祀財産を巡る問題は、
法律と慣習が交錯し、感情的な対立に発展しやすい分野です。