遺産分割協議書が作成出来ない場合

遺産分割協議書と相続人全員の押印について

遺産分割協議書は、相続人全員の合意によって成立する法律行為です。
そのため、**相続人全員(遺産を取得する人・取得しない人を含む)**の署名および押印が必要となります。

これは、民法第907条に基づく遺産分割が、
「相続人全員の協議によって行うもの」とされているためです。


相続人が分散している場合の実務上の問題

実務上、相続人が全国各地に分散しているケースは珍しくありません。

たとえば、
相続人が5人存在し、
1通の遺産分割協議書を郵送で回覧し、
全員から署名・実印による押印を得るとなると、
時間・手間・心理的負担のいずれも相当なものとなります。

この段階で、
「手続きが進まない」「途中で不安を感じる相続人が出る」
といった問題が生じやすくなります。


遺産分割協議証明書という方法

このような場合の実務対応として、
**「遺産分割協議証明書」**を利用する方法があります。

遺産分割協議証明書とは

遺産分割協議証明書とは、
各相続人がそれぞれ個別に作成し、
同一内容の遺産分割協議が成立していることを証明する書面

です。

各相続人が、

  • 遺産分割の内容を確認

  • 実印で押印

  • 印鑑証明書を添付

したうえで返送するため、
一通の協議書を回覧する必要がなく、時間短縮につながる
という実務上のメリットがあります。


遺産分割協議証明書の注意点

もっとも、この方法は万能ではありません

遺産分割協議証明書は、

  • 相続人全員が遺産分割内容に十分納得している

  • 争いの火種が一切ない

という場合に限って、
補助的・便宜的な方法として用いるべきものです。

郵送という形式上、

  • 内容を十分理解しないまま押印してしまう

  • 後日「聞いていない」「納得していない」と主張される

といったリスクも否定できません。


相続人間で納得が得られない場合

相続人の中に、

  • 遺産分割内容に納得されない方

  • 連絡が取りづらい方

  • 感情的な対立がある方

がいる場合には、
郵送による対応ではなく、話し合いによる調整が不可欠です。

それでも合意に至らない場合には、
家庭裁判所における

  • 遺産分割調停

  • 遺産分割審判

といった法的手続きへ進むことになります。

もっとも、裁判所を利用した場合、
相続をきっかけに
親族関係が断絶してしまうケースも少なくありません。


専門家による中立的な調整の重要性

当事務所では、
相続人間の利害や感情を踏まえたうえで、
中立的な立場からの調整業務を行っています。

  • 相続人同士が直接言いづらい内容の整理

  • 音信不通の相続人への対応

  • 波風を立てない合意形成

を重視し、
できる限り円満な解決を目指しています。

音信不通の相続人がいる場合の対応については、
別途「相続人の協力」に関するQ&Aも参考にしてください。


まとめ

  • 遺産分割協議書は相続人全員の署名・押印が必要

  • 相続人が分散している場合、遺産分割協議証明書という方法もある

  • ただし、争いがある場合には慎重な対応が不可欠

  • 円満な解決のためには、専門家の関与が有効

相続手続きは、
法的正確性と人間関係への配慮の両立が求められます。