祖父名義のままの不動産がある場合の相続登記の考え方
父が亡くなったものの、所有していた不動産の名義が、父の祖父(つまり被相続人の父方の祖父)名義のままになっている、というケースは、実務上決して珍しくありません。
いわゆる「数次相続が未処理の状態」です。
■ 相続の流れは「二段階」になります
このような場合、不動産の承継関係は、
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祖父から父(または母)への相続
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父(または母)から子への相続
という 二つの相続が連続して発生している状態 になります。
したがって、名義変更(相続登記)を行うには、
祖父の相続と父の相続の両方を前提とした手続きが必要です。
■ 遺産分割協議書の作成方法(実務上のポイント)
この場合、遺産分割協議書は、
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被相続人:祖父
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被相続人:父
という 二名を被相続人として記載 する形になります。
実務上は、例えば次のような書き出しになります。
「被相続人 亡○○の相続人であり、かつ、被相続人 亡△△の相続人であるA、B、Cは、次のとおり遺産分割協議を行った。」
このように記載することで、
祖父から父、父から子への承継関係を一体として整理することが可能になります。
■ 登記手続は「中間省略的な相続登記」
登記実務上は、
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祖父名義 → 父名義 → 子名義
と順に登記を入れるのではなく、
祖父名義から最終取得者(子)への登記を一度で行う形となります。
いわゆる「中間省略登記」と呼ばれてきた処理ですが、
正確には、数次相続を原因とする相続登記です。
この方法を用いることで、
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登記申請が一度で済む
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登録免許税や手続負担を抑えられる
といった実務上のメリットがあります。
■ 不動産以外の財産(預貯金など)も同様に注意が必要
この考え方は、不動産だけでなく、
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預貯金
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有価証券
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その他の相続財産
にも共通します。
ただし、注意すべき点として、
祖父の相続人全員と、父の相続人全員の合意が必要となります。
その結果、
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兄弟姉妹が多い
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すでに亡くなっており代襲相続が発生している
といった事情が重なると、
相続人が数十名に及ぶケースも決して珍しくありません。
この場合、遺産分割協議書には、
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相続人全員の署名
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実印による押印
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印鑑証明書の添付
が必要となり、協議書作成には相当な時間と労力を要します。
■ 相続人全員の理解と合意が不可欠
数次相続が絡むケースでは、
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なぜ自分が署名・押印を求められるのか
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どのような権利関係になっているのか
を、相続人一人ひとりが理解し、納得することが不可欠です。
合意が得られない場合には、
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不動産の共有を避けるため分割方法を検討する
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不動産を売却して換価分割を行う
といった対応を迫られることもあります。
■ 重要:相続登記の義務化との関係
令和6年(2024年)4月から、
相続登記は義務化されました。
相続により不動産を取得したことを知った日から 3年以内 に登記を行わない場合、
過料の対象となる可能性があります。
数次相続を放置していると、
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相続人が増え続ける
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手続が指数関数的に複雑化する
という結果を招きやすいため、
相続が発生した段階で、速やかに名義変更を行うことが極めて重要です。
■ まとめ
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祖父名義のままの不動産は、数次相続として整理する
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遺産分割協議書は被相続人を複数記載する
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相続人全員の合意が不可欠
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相続登記義務化により、放置はリスクが高い
相続不動産については、
「いつかやればよい」ではなく、
**「相続が始まったら、すぐに対応する」**ことを強くお勧めします。
