結論から申し上げると、通帳をお子様に渡すこと自体は直ちに違法とはなりませんが、通帳に記載された預金が当然にそのお子様のものになるわけではありません。
1.通帳の交付=預金の贈与ではありません
預金債権は、民法上「指名債権」にあたり、通帳という物を渡しただけでは、預金の権利が移転したことにはなりません。
仮に、生前に「このお金を子どもにあげる」という意思があったとしても、
- 贈与契約が成立していること
- 実際に預金が引き出され、受贈者に帰属していること
などが客観的に確認できなければ、預金は被相続人の相続財産として扱われます。
そのため、亡くなった時点で通帳に残っている預金は、原則として
お子様を含む相続人全員の共有財産となります。
2.相続財産である以上、分配は相続人全員で決めます
預かっていた預金は、あくまで被相続人の所有財産ですので、
相続開始後は、
- 相続人全員による遺産分割協議
- または有効な遺言書
に基づいて分配されることになります。
ご本人の意思として「その子どもだけに渡したい」という希望があったとしても、
遺言書等の法的手段を用いていなければ、その意思を実現できない場合が多いのが実務です。
3.本来取るべきだった対策
このようなケースでは、本来であれば、
- 遺言書(自筆証書遺言または公正証書遺言)
- 死因贈与契約
- 遺言信託・家族信託
などの方法を用いておくことで、
相続人間の紛争を防ぎ、確実に意思を実現することが可能でした。
特に、2019年以降は自筆証書遺言の方式緩和や法務局保管制度の創設により、
遺言書の利用は以前より現実的な選択肢となっています。
4.死亡後の預金引き出しには注意が必要です
預かった通帳を使い、被相続人死亡後に、
- キャッシュカードで引き出す
- 相続手続きを経ずに預金を処分する
といった行為を行うと、他の相続人から返還請求(不当利得返還請求等)を受ける可能性があります。
金融機関の正式な解約手続きでは、
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人全員の同意
- 印鑑証明書・実印による押印
が原則として必要です。
5.「秘密にしていれば分からない」は通用しません
「カードで引き出せば分からないのでは」と思われがちですが、
相続人は金融機関に対して、取引履歴や残高の開示請求を行うことができます。
結果として、後から判明し、相続人間の信頼関係が大きく損なわれるケースも少なくありません。
まとめ
- 通帳の預託や口頭の依頼だけでは、預金は子どものものにならない
- 預金は原則として相続財産となり、相続人全員で分配を決める
- 意思を確実に実現するには、遺言書や信託の活用が不可欠
- 死後の預金引き出しは、法的リスクが高い
