所在不明の相続人がいる場合の対応方法
相続手続きにおいて、所在不明の相続人がいる場合には、慎重かつ段階的な対応が必要となります。
遺産分割協議は、相続人全員の参加と合意が必要であり(民法第907条)、たとえ面識のない相続人であっても、その手続きを省略することはできません。
① まずは戸籍調査を徹底的に行う
所在不明の相続人がいる場合でも、最初に行うべきことは、戸籍関係書類の収集です。
具体的には、
- 出生から現在に至るまでの戸籍謄本等を取得し
- その方の最終の本籍地を確認します
次に、最終本籍地の市区町村役場に対して、**「戸籍の附票」**を請求します。
戸籍の附票には、住民票上の住所の履歴が記載されており、日本国内であれば、原則として現住所を確認することが可能です。
② 海外在住の場合の実務対応
相続人が海外に居住していることが判明した場合、日本国内の住民票や印鑑証明書は取得できません。
そのため、実務上は、
- 相続人の配偶者や子、兄弟姉妹などの近親者に連絡を取り
- 相続開始の事実を伝え、連絡先を調査する
という方法を取らざるを得ない場合も少なくありません。
また、海外在住者は印鑑証明書に代わり、
- 署名証明書(サイン証明)
- 在外公館(日本大使館・領事館)で発行される証明書類
を利用して、遺産分割協議書等に対応することになります。
これらの手続きは、国内手続きに比べて相当の時間を要する点に注意が必要です。
③ それでも所在が判明しない場合
戸籍・附票調査を尽くし、親族等を通じた確認を行っても、なお相続人の所在が判明しない場合には、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
この場合に利用される制度が、
不在者財産管理人の選任です(民法第25条以下)。
家庭裁判所が選任した不在者財産管理人が、所在不明の相続人に代わって遺産分割協議等に関与することで、相続手続きを進めることが可能となります。
※なお、「相続人が存在しない場合」に選任される相続財産清算人(旧・相続財産管理人)とは制度が異なりますので、混同に注意が必要です。
④ 実務上の注意点
- 所在不明の相続人がいる状態で遺産分割を行うことはできない
- 調査を怠ったまま手続きを進めると、後日、遺産分割の無効や損害賠償問題に発展する可能性がある
- 早期に専門家へ相談し、適切な調査・申立てを行うことが重要
