旧樺太(からふと)の戸籍とその現状
旧樺太(日本統治時代の樺太)に関する戸籍・除籍簿は、第二次世界大戦に伴う戦災等により、その大半が失われています。そのため、現在でも一般的な市区町村役場で戸籍謄本等を取得することはできません。
この点については、外務省が公式に見解を示しています。
旧樺太の戸籍(除籍)簿は、ほとんどが戦乱により失われましたが、下記の6か村については、その戸籍簿の一部が外務省外地整理室に保管されており、その写しを交付しています。また、保管していない旧樺太の戸籍については、請求があれば「保管していない旨の証明」を交付しています。
外務省において写しの交付が可能とされているのは、次の6村に限られます。
-
大泊郡遠淵村(とおぶち)
-
大泊郡知床村(しれとこ)
-
大泊郡富内村(とんない)
-
元泊郡元泊村(もととまり)
-
敷香郡内路村(ないろ)
-
敷香郡散江村(ちりえ)
これら以外の地域については、戸籍簿そのものが現存していないのが原則です。
相続手続きにおける戸籍の必要性
相続手続きにおいては、
-
被相続人の出生から死亡までの戸籍
-
相続人全員が確認できる戸籍関係資料
を収集し、相続関係を公的に証明することが求められます。
これは、相続登記(不動産登記法)、家庭裁判所手続、金融機関での相続手続き等、いずれにおいても共通する要請です。
通常であれば、戸籍謄本・除籍謄本は市区町村役場で取得しますが、旧樺太に関する戸籍については、例外的に外務省が窓口となります。
外務省への請求方法と「戸籍不存在証明」
旧樺太の戸籍に関する請求は、すべて郵送による申請となります。
-
戸籍(除籍)簿の写しが保管されている場合 → その写しの交付
-
保管されていない場合 → **「当該戸籍を保管していない旨の証明書」**の交付
が行われます。
この「保管していない旨の証明」は、
-
戸籍調査を尽くしたこと
-
戸籍が物理的に不存在であること
を示す重要な資料として、相続実務上、戸籍に代わる補完資料となります。
戦災等により戸籍が失われているケースは珍しくない
戸籍が戦争等により失われているのは、旧樺太に限りません。第二次世界大戦中の空襲や戦災により、
-
戸籍簿が焼失した地域
-
一部期間の戸籍が欠落している地域
は、全国各地に存在します。
このような場合、市区町村役場からは、
-
「当該期間の戸籍簿が存在しない旨の証明書」
が発行されることになります。
戸籍が存在しない場合の実務対応
戸籍が存在しない場合であっても、相続手続きを直ちに断念する必要はありません。
実務上は、
-
戸籍不存在証明
-
他に取得可能な戸籍・除籍・改製原戸籍
-
住民票、戸籍の附票、閉鎖外国人登録原票等
を組み合わせ、判明する範囲で相続関係を特定していきます。
相続関係説明図(相続関係図)においては、
-
戸籍上確認できない部分については
-
「戦災等により戸籍不明」「戸籍不存在」などと明示
したうえで作成します。
なお、証明書としての有効性や記載内容の可否については、
-
法務局(相続登記)
-
家庭裁判所(各種申立て)
と事前に協議・照会しながら進めることが、実務上不可欠です。
現在の戸籍制度と注意点
現在の戸籍は電子化が進んでおり、制度上は、過去のように戸籍簿そのものが消失する可能性は極めて低くなっています。
もっとも、
-
電子化以前の紙戸籍
-
改製前戸籍
については、今なお欠落・滅失の問題が残る場合があります。
そのため、戸籍が存在しないこと自体を証明する作業は、現在でも相続実務において重要な位置を占めています。
