相続人がいない場合、財産はどうなるのか
「相続が発生しても相続人がいなければ、財産は国のものになる」――この点は、比較的よく知られているかもしれません。
もっとも、法律上は、相続開始と同時に直ちに国庫へ帰属するわけではありません。民法は、相続人の有無を慎重に確認したうえで、最終的に相続人が存在しないと確定した場合に限り、国庫帰属とする仕組みを採っています(民法951条〜959条)。
では、法律上「相続人がいない」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
法定相続人の範囲と順位(民法887条以下)
民法では、相続人となる者とその順位を明確に定めています。
① 子がいない
被相続人に子がいる場合、その子(または代襲相続人)が相続人となります(民法887条)。
② 配偶者がいない
配偶者は常に相続人となりますが(民法890条)、ここでいう配偶者とは法律上の婚姻関係にある者を指します。
いわゆる内縁関係・事実婚のパートナーは、法定相続人には含まれません。
③ 直系尊属(父母・祖父母)がいない
子も配偶者もいない場合、次に相続人となるのは父母などの直系尊属です(民法889条1項1号)。
しかし、被相続人が高齢である場合、すでに両親が他界しているケースも少なくありません。
④ 兄弟姉妹がいない
直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。
兄弟姉妹がいる場合は、その者たちで相続財産を分けることになります。
「従兄弟は相続人になるのか」という誤解
実務上よく誤解される点として、
両親に兄弟姉妹がいるのだから、いとこ(従兄弟姉妹)が相続人になるのではないか
という質問があります。
しかし、従兄弟姉妹は法定相続人には含まれません。民法上、相続権が認められているのは、あくまで兄弟姉妹までであり、その先の親族には相続権は及びません。
この点は、明確な法律上の線引きがされています。
相続人不存在となる典型例
相続人不存在となるのは、決して珍しいケースではありません。たとえば、次のような場合です。
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一人っ子である
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未婚(または離別・死別)で、法律上の配偶者がいない
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両親および祖父母がすでに死亡している
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兄弟姉妹もいない(または全員死亡しており代襲相続人もいない)
このような条件が重なると、法律上の相続人が誰も存在しない状態となります。
近年は、結婚という形を取らず、パートナーとして共同生活を送る方も増えていますが、現行法上、そのパートナーには当然に相続権は認められません。
相続人がいない場合の最終的な帰結と対策
相続人が存在しない場合、相続財産は一定の手続きを経た後、最終的に国庫へ帰属します(民法959条)。
これは一つの結論ではありますが、
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生前にお世話になった方
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長年生活を共にした内縁のパートナー
がいる場合まで、必ずしも望ましい結果とはいえないでしょう。
このような場合に最も有効なのが、遺言書による遺贈です。
遺言書を作成しておけば、法定相続人がいない場合でも、
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特定の個人(パートナー等)
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公益団体や自治体
へ、自らの意思どおりに財産を残すことが可能です。
相続人不存在は、事後的な制度(相続財産管理人制度等)で対応することも可能ですが、時間・費用・不確実性を考慮すると、遺言書による予防法務こそが最も確実な手段といえるでしょう。
※本記事は一般的な法制度の解説であり、具体的な事案については専門家への個別相談を前提としています。
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