遺言書の無効と取消について

遺言書が無効になる場合について

「遺言書が無効になることはあるのでしょうか」という質問を受けることがあります。
結論から申し上げると、遺言書が無効と判断される場合は、実際に存在します

遺言が無効となる主なケースは、次のとおりです。

① 民法の定める方式に従っていない遺言

遺言は、民法が定める方式に厳格に従って作成しなければなりません
方式を欠く遺言は、内容のいかんにかかわらず無効となります。

たとえば、

  • 自筆証書遺言に日付や署名がない

  • 全文を自書していない(※財産目録を除く)

  • 加除訂正の方式が守られていない

などの場合です(民法968条ほか)。

② 遺言能力を欠く者による遺言

遺言をするためには、満15歳以上であり、かつ意思能力が必要です(民法961条)。

そのため、

  • 満15歳未満の者による遺言

  • 認知症などにより、遺言内容を理解・判断する能力を欠いていた場合

には、その遺言は無効となる可能性があります。

③ 公序良俗・強行法規に反する遺言

遺言の内容が、

  • 公序良俗に反する場合

  • 法律上許されていない内容(強行法規違反)

である場合、その部分、あるいは遺言全体が無効となることがあります。

例としては、

  • 犯罪行為を条件とする遺贈

  • 婚姻・離婚の自由を不当に制限する内容

などが挙げられます。

④ 遺言者に要素の錯誤がある場合

遺言の内容について、遺言者に重要な事実の誤認(要素の錯誤)がある場合には、
その遺言は取り消される可能性があります(民法95条)。

たとえば、

  • 既に死亡している人物を相続人と誤信していた

  • 存在しない財産を前提に遺言を作成していた

といったケースです。

⑤ 詐欺または脅迫によってなされた遺言

遺言が、詐欺または脅迫によって作成された場合には、
その遺言は取り消すことができます(民法96条)。

この場合、遺言自体は当然に無効となるわけではなく、「取消し」によって効力を失う点に注意が必要です。

取消しができるのは誰か

上記④・⑤のような場合、
遺言者が生前であれば、遺言者本人が取消すことができます
また、遺言者の死亡後は、相続人などの利害関係人が取消しを行うことになります


遺言者による自由な撤回(取消し)について

遺言は、遺言者の最終意思を尊重する制度であるため、
遺言者は、理由を問わず、いつでも遺言を撤回(取消し)することができます(民法1022条)。

「気が変わった」「状況が変わった」といった理由であっても、まったく問題ありません。

公正証書遺言の場合でも撤回・変更は可能です

公正証書遺言を作成した場合であっても、
その後に、

  • 遺言内容の全部を撤回する

  • 一部のみを書き換える

ことは可能です。

撤回する方法としては、
新たに遺言書を作成し、先に作成した遺言を撤回する旨を明示したうえで、新しい内容の遺言を定める
という方法が一般的です。

この場合、後の遺言が優先され、前の遺言はその抵触する範囲で効力を失います(民法1023条)。


実務上のポイント

遺言は、

  • 方式

  • 作成時の判断能力

  • 内容の適法性

のいずれを欠いても、無効・取消しの対象となり得ます。

そのため、
「遺言を書いたから安心」ではなく、「有効な遺言になっているか」まで確認することが重要です。
遺言作成にあたっては、専門家の関与により、後日の紛争リスクを大きく減らすことができます。

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