事実婚のパートナーに財産を残したい場合の注意点
― 自筆証書遺言と公正証書遺言の実務的な違い ―
たとえば、事実婚の関係にあるパートナーの場合、
法律上は配偶者ではないため、法定相続人にはなりません。
この点を親族が理解している場合であっても、
いざ相続が開始すると、感情や利害が絡み、
当初の認識どおりに手続が進まないケースは少なくありません。
自筆証書遺言による第三者遺贈の不安定さ
「自筆証書遺言で、パートナーに遺贈すると書いてあるから大丈夫」
と思われがちですが、実務上は不安定な面があります。
特に、次のような疑念が生じることがあります。
-
本当に本人の意思なのか
-
無理に書かされたのではないか
-
判断能力が十分だったのか
こうした疑念は、自筆証書遺言では避けにくいのが実情です。
自筆証書遺言には「検認」が必要
法務局の遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言は、
家庭裁判所での**検認手続(民法1004条)**が必要となります。
この検認には、
-
申立て
-
裁判所の期日指定
-
相続人全員への通知
といった手続があり、一定の時間を要します。
検認中に起こり得る実務上の問題
検認が終わるまでの間、
-
不動産の名義変更ができない
-
遺言執行が進められない
という状態になります。
この間に、
相続人である親族が不動産を処分しようとしたり、
トラブルに発展する可能性も否定できません。
理論上は、
-
処分禁止の仮処分
-
仮差押え
といった手段も考えられますが、
実際には**多額の担保金(保証金)**を求められることもあり、
事実婚のパートナーにとって現実的な選択肢とは言い難い場合があります。
公正証書遺言+遺言執行人指定の強み
一方で、公正証書遺言を作成し、
あらかじめ遺言執行人を指定しておけば状況は大きく異なります。
-
検認手続が不要
-
公証人が関与しているため意思能力の争いが起こりにくい
-
遺言執行人が単独で名義変更等の手続を進められる
特に、
遺言執行人を事実婚のパートナー自身に指定しておくことで、
親族の同意を得ることなく、
不動産の名義変更や預貯金の解約手続を進めることが可能になります。
結論
-
事実婚のパートナーは相続人ではない
-
財産を残すには「遺贈」が必要
-
第三者遺贈は自筆証書遺言では紛争リスクが高い
-
公正証書遺言+遺言執行人指定が実務上もっとも安全
まとめ
法定相続人以外の方に確実に財産を残したい場合、
特に事実婚のパートナーへの遺贈については、
「遺言を書いた」ことより
「どの方式で、誰に執行させるか」
が決定的に重要です。
第三者への遺贈を検討されている場合は、
早い段階で専門家や公証役場へ相談されることを強くお勧めします。
関連するページ
