検認をしない自筆証書遺言は有効なものとならない?

自筆証書遺言と検認手続きの注意点

― 公正証書遺言をお勧めする理由 ―

自筆証書遺言を作成した場合には、原則として家庭裁判所での「検認」手続きが必要となります
(民法第1004条)。

検認手続きに必要となる戸籍収集の負担

遺言書そのものに形式的な問題がなかったとしても、
相続手続きは残された相続人が行うことになります。

その際、家庭裁判所へ提出するために、

  • 被相続人が出生してから死亡するまでの連続した戸籍一式

  • 相続人全員の現在戸籍

を収集する必要があります。

これは、相続人の範囲を正確に確定するために不可欠な手続きですが、
本籍地が複数回変わっている場合などには、戸籍収集だけで相当な時間と労力を要することも少なくありません。


行方不明者・面識のない相続人がいる場合のリスク

相続人の中に、

  • 長年連絡を取っていない方

  • 一度も会ったことのない兄弟姉妹や甥姪

  • 行方不明となっている方

が含まれる場合には、
所在調査や家庭裁判所への申立て(不在者財産管理人の選任等)が必要となることもあり、
結果として時間的・金銭的な負担が大きくなるケース
が実務上多く見受けられます。


自筆証書遺言特有の法的リスク

自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、

  • 方式違反がないか(民法第968条)

  • 内容に法的な矛盾がないか

  • 真意に基づくものか

といった点について、生前に専門家のチェックを受けていないケースが大半です。

そのため、相続開始後に、

  • 遺言の無効主張

  • 筆跡鑑定の実施

  • 遺言能力を巡る争い

といった問題に発展することもあります。
過去の著名な相続紛争(いわゆる一澤帆布事件)も、こうしたリスクを象徴する事例の一つといえるでしょう。


検認を行う家庭裁判所の管轄

検認の申立ては、
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。

たとえば、

  • 被相続人が地方の実家に住んでいた

  • 長期間実家に戻っておらず、相続人が遠方に居住している

といった場合には、
移動や書類のやり取りだけでも大きな負担となることがあります。

※なお、検認は「法務局」ではなく「家庭裁判所」の手続きとなります。


公正証書遺言のメリット

これに対し、公正証書遺言は、

  • 公証人が関与するため方式違反がなく、法的安全性が高い

  • 原本が公証役場に保管され、紛失・改ざんの心配がない

  • 家庭裁判所での検認が不要(民法第1004条但書)

といった大きなメリットがあります。

その結果、

  • 相続開始後すぐに名義変更等の手続きが可能

  • 相続人の精神的・実務的負担が軽減される

  • トータルで見れば、結果的に費用を抑えられるケースが多い

という実務上の利点があります。


まとめ:相続人の負担を減らすための遺言選択

「自分で書いた遺言があれば十分」と思われがちですが、
相続は残された方が行う手続きです。

相続人に余計な手間や負担、紛争の種を残さないためにも、
当事務所では、公正証書遺言の作成を強くお勧めしています。

遺言書の作成をご検討の際は、
お気軽に当事務所までご相談ください。

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