遺言書が無効とならないように・・・

自筆証書遺言と検認手続

― 現行制度を踏まえた注意点と実務上の対応 ―

自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、家庭裁判所において「検認」の手続きを受ける必要があります(民法第1004条)。
検認とは、遺言書の存在およびその形状、日付、署名、加除訂正の状況等を確認し、内容を明確にするための手続です。

重要な点として、検認は遺言書の有効性や内容の妥当性を判断する手続ではありません。
検認を経たからといって、その遺言書が法的に有効であることが保証されるわけではない点には注意が必要です。


自筆証書遺言の手軽さと「有効性への不安」

自筆証書遺言は、全文・日付・署名を自書し、押印することで作成できるため(民法第968条)、書店で購入した書籍やインターネット情報を参考に、比較的容易に作成することができます。

一方で、実際の相続実務では、
「せっかく書いた遺言書が無効と判断された」
「内容が曖昧で、結局相続人同士の協議が必要になった」
といったケースが少なくありません。

インターネット上では「だから公正証書遺言が安心」といった説明も多く見られますが、公正証書遺言は公証人との事前調整や証人2名の立会いが必要であり、思い立ってすぐに作成できるものではない、という事情もあります。

そのため、現在でも「まずは自筆証書遺言を作成したい」と考える方は多いのが実情です。


自筆証書遺言が無効・問題となりやすい典型例

自筆証書遺言が問題となるケースには、次のようなものがあります。

  • 日付が記載されていない、または特定できない

  • 財産の記載が不十分で、どの不動産・預貯金を指すのか不明確

  • 「すべて妻に任せる」など、法的解釈が分かれる表現を使用している

  • 加除訂正の方式が民法の定めに従っていない

  • 相続関係や遺留分への配慮がなく、結果として紛争を招く内容となっている

これらは、書籍どおりに作成したつもりであっても、実務上は無効またはトラブルの原因となり得る典型例です。


公正証書遺言と自筆証書遺言の比較

遺言方式にはそれぞれ特徴があります。

自筆証書遺言
・手軽に作成でき、費用もほとんどかからない
・一方で、方式不備や解釈を巡る争いが生じやすい
・原則として検認が必要

公正証書遺言
・公証人が作成するため方式違反のリスクが極めて低い
・内容が明確で、相続手続きが円滑に進みやすい
・証人2名が必要で、事前準備に時間を要する

どちらが適しているかは、財産の内容や家族関係によって異なります。


自筆証書遺言保管制度の位置づけと注意点

令和2年に開始された自筆証書遺言保管制度を利用した場合、家庭裁判所での検認は不要となります。
また、法務局で遺言書を保管するため、紛失や改ざんのリスクを減らすことができます。

もっとも、この制度は、

  • 遺言書の内容が法的に有効かどうか

  • 相続関係や遺留分に問題がないか

といった点まで審査するものではありません。
したがって、保管制度を利用していても、内容に不備があれば無効となる可能性は残ります。


現実的な対策として考えられる方法

このようなリスクを踏まえると、次のような対応が現実的といえます。

① 公証役場で相談する

結果として公正証書遺言となる場合が多いものの、最も確実な方法です。

② 専門家に内容チェックを依頼する

自筆証書遺言であっても、事前に専門家のチェックを受けることで、無効や紛争のリスクを大きく下げることができます。

遺言書は、誰にも知られずに遺しておきたい書類と考えられがちですが、
「相続開始後にきちんと機能するかどうか」こそが最も重要です。


まとめ ―「作成した」だけで安心しないために

自筆証書遺言は、手軽である一方、わずかな不備によって無効となる可能性を伴います。
検認や保管制度があるからといって、その内容の有効性が保証されるわけではありません。

大切なのは、相続が発生したときに、実際に使える遺言書を遺すことです。

当事務所では、公正証書遺言への切替えのご相談など、状況に応じたサポートを行っております。