長男一人に相続させるには

相続人全員の意思で、長男にすべての財産を相続させたい場合の対応方法

母が亡くなり、相続が発生しました。
相続人は5人兄弟で、そのうち長男は母と同居し、
長男の妻も、亡くなるまで献身的に介護をしてくれていました。

財産は多くありませんが、
その事情を踏まえ、相続人全員の意思として、長男にすべての財産を相続してもらいたい
と考えています。

このような場合、どのような手続きを取ればよいのでしょうか。


■ 方法① 他の相続人全員が相続放棄をする

一つ目の方法は、
長男以外の相続人全員が相続放棄をするというものです。

相続放棄は、
相続の開始を知った時から3か月以内に、
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する必要があります
(民法第915条、第938条)。

この方法を取ると、
相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされ(民法第939条)、
結果として、長男が単独で相続人となります。

<注意点>

  • 3か月の熟慮期間を過ぎると、原則として相続放棄はできません

  • 放棄すると、借金などの負債も一切相続できなくなります

  • 他の兄弟に子がいる場合、代襲相続が発生する可能性があります


■ 方法② 相続分の譲渡を行う

二つ目の方法は、
長男以外の相続人が、自分の相続分を長男に譲渡する方法です。
これを「相続分の譲渡」といいます。

相続分の譲渡は、
相続開始後であれば、家庭裁判所を通さずに行うことが可能で、
当事者間の合意により成立します。

<注意点>

  • 相続分の譲渡をしても、相続人の地位自体は失われません

  • 相続債務については、原則として法定相続分に応じた責任が残ります

  • 不動産がある場合、登記手続が複雑になることがあります


■ 方法③ 遺産分割協議により、長男がすべて取得する

三つ目の方法は、
相続人全員で遺産分割協議を行い、
「長男がすべての遺産を取得する」内容の遺産分割協議書を作成する方法
です
(民法第907条)。

この方法では、

  • 相続人全員の合意

  • 実印による押印

  • 印鑑証明書の添付

が必要となります。

<実務上のメリット>

  • 相続放棄の期限(3か月)を過ぎていても対応可能

  • 相続人の地位や債務関係を整理しやすい

  • 不動産・預貯金などの名義変更がスムーズ


■ 実務的にはどの方法が適しているか

ご質問のケースのように、

  • 相続人全員が協力的である

  • 特別な事情(債務超過等)がない

このような場合には、
遺産分割協議書を作成し、長男がすべての遺産を取得する方法が、最も簡便で実務的
といえるでしょう。


■ 寄与分との関係

長男の妻による介護は、
法律上の「寄与分」(民法第904条の2)として認められる余地があります。

もっとも、寄与分の主張には立証の問題が伴うため、
相続人全員が合意できているのであれば、
遺産分割協議で調整する方が、紛争を回避しやすい
といえます。


■ まとめ

相続人全員の意思で、長男にすべての財産を相続させたい場合には、

  1. 相続放棄

  2. 相続分の譲渡

  3. 遺産分割協議

という3つの方法があります。

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