遺産分割協議がまとまらない場合の法的手続きと注意点
相続が開始すると、相続人は、被相続人の遺産をどのように分けるかについて協議を行います。
相続人全員の合意が得られた場合には、遺産分割協議書を作成し、その内容に従って各相続人が相続財産を取得します。
例えば、
- 不動産の相続による名義変更(相続登記)
- 預貯金の解約・名義変更
といった手続きでは、
遺産分割協議書が必須書類となるケースが多く、実務上極めて重要な書面です。
■ 話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所へ
しかしながら、相続人間の話し合いがまとまらず、
遺産分割協議書を作成できない場合には、
家庭裁判所へ遺産分割調停の申立てを行うことになります
(家事事件手続法・民法第907条)。
この申立ては、いわば「第三者である裁判所の関与のもとで話し合いを行う手続」です。
■ 「法定相続分があるから大丈夫」という誤解
この段階で、
法定相続分が決まっているのだから、問題ないのでは?
という質問を受けることがあります。
確かに、民法では各相続人の法定相続分が定められていますが、
これは最終的な分配割合の基準を示したものに過ぎません。
相続財産が、
- 現金や預貯金のみ
であれば、法定相続分どおりに分けることも比較的容易ですが、
- 不動産
- 自動車
- 収益不動産
などが含まれる場合には、
- どの不動産を誰が取得するのか
- 共有にするのか、単独取得にするのか
- 代償金を支払うのか
といった具体的な問題が必ず生じます。
そのため、法定相続分があるからといって、
自動的に相続問題が解決するわけではありません。
■ 調停でも合意できなければ「審判」へ移行
遺産分割調停においても、
相続人全員の合意がなければ調停は成立しません。
調停が不成立となった場合には、
自動的に遺産分割審判へと移行し、
最終的には家庭裁判所が、法定相続分や一切の事情を考慮して、
強制的に分割方法を決定することになります。
■ お勧めする実務的対応
当事務所では、
可能な限り、当事者間の話し合いによる遺産分割をお勧めしています。
その理由は、
- 調停・審判は長期間を要することが多い
- 弁護士費用や各種実費が発生する
- 相続人同士の関係が決定的に悪化しやすい
といったデメリットがあるためです。
実際には、
取得する相続財産の額よりも
弁護士費用等の方が高額になってしまった
というケースも、決して珍しくありません。
■ まとめ
- 遺産分割は、まず相続人全員の協議が原則
- 合意できなければ家庭裁判所の調停を利用
- 調停でも合意できなければ審判に移行
- 法定相続分があっても自動解決はしない
- 時間・費用・関係悪化を避けるため話合いが重要
相続開始後の対応次第で、
手続きの難易度・費用・精神的負担は大きく変わります。
早い段階で専門家に相談し、
冷静かつ現実的な分割方法を検討することが、
円満な相続への近道といえるでしょう。
