相続財産調査の実務 ― 不動産・預貯金・債務の確認方法と注意点
相続手続を進めるにあたり、まず必要となるのが相続財産の全体像の把握です。
相続財産には、不動産や預貯金といった積極財産だけでなく、借入金等の債務(消極財産)も含まれます。
■ 不動産の調査方法(名寄帳の活用)
不動産については、被相続人(本件ではお姉様)がお住まいであった市区町村役場において「名寄帳(固定資産課税台帳)」を請求することで確認できます。
名寄帳を取得すると、
-
当該市区町村内に所在する
-
被相続人名義の土地・建物
を一覧で把握することが可能です。
ただし注意点として、
-
名寄帳で確認できるのは、当該市区町村内の不動産のみ
-
他の市区町村に不動産を所有している場合は反映されません
という限界があります。
そのため、居住地以外に不動産を所有している可能性がある場合は、
-
固定資産税の納税通知書
-
不動産の権利証(登記識別情報)
-
過去の売買契約書等
といった資料がないと、調査は極めて困難となります。
■ 預貯金の調査方法と実務上の限界
預貯金については、原則として
-
遺品から通帳・キャッシュカード
-
金融機関からの郵便物
を探し出す方法が基本となります。
これらが見つからない場合には、
-
被相続人の住所地周辺にある金融機関
-
過去の勤務先・年金振込先と推測される金融機関
などに対し、相続人であることを証明したうえで、個別に照会を行うほかありません。
なお、金融機関には「全国一括照会制度」は存在せず、
すべての金融機関に網羅的な調査を行うことは、実務上も大きな負担となります。
■ 名寄帳・金融機関照会に必要な書類
不動産・預貯金いずれの調査においても、
-
被相続人が死亡したことが分かる戸籍(除籍謄本)
-
相続人との関係が分かる戸籍(兄弟姉妹関係が確認できるもの)
が必要となります。
これらは、相続人であることを第三者(市区町村・金融機関)に証明するための必須書類です。
■ 相続財産調査は想像以上に時間と手間がかかる
相続財産の調査は、
-
不動産
-
預貯金
だけでも相当な時間と労力を要します。
これに加えて、
-
有価証券
-
保険
-
貸付金
-
未収金
などが存在する場合、調査はさらに煩雑になります。
■ 見落とされがちな「債務」の確認
実務上、最も注意すべき点が債務(借金)の存在です。
高齢であったことから、
「特に借金はないだろう」
と考えがちですが、
-
金融機関からの借入
-
クレジットカードの未払金
-
保証債務
などは、すべて相続の対象となります(民法第896条)。
債務が判明した場合には、
-
単純承認
-
限定承認
-
相続放棄
といった選択を、相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。
■ 専門家による相続財産調査の重要性
相続財産の調査は、
-
時間的制約
-
法的判断
-
書類収集の煩雑さ
を伴うため、専門家の関与が有効となる場面が少なくありません。
当事務所では、
-
相続財産の所在調査
-
不動産・預貯金の確認
-
債務の有無の調査
-
相続放棄・限定承認の判断支援
まで、相続手続を総合的にサポートしております。
■ まとめ
-
不動産は名寄帳で確認できるが、地域限定である
-
預貯金調査には実務上の限界がある
-
相続財産には債務も含まれる
-
調査には相応の時間と労力が必要
-
早期に専門家へ相談することでリスク回避が可能
相続財産調査は、その後の遺産分割・相続放棄の判断を左右する極めて重要な初動手続です。
慎重かつ確実に進めることをお勧めします。
