2. 遺産分割
1) 遺産分割の基本
遺産分割は、遺産に属する財産・権利の種類や性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活状況などの一切の事情を考慮して行われます(民法第906条)。
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共同相続人は、被相続人が遺言で分割を禁止していない限り、いつでも協議による遺産分割が可能です(民法第907条)。
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協議が整った場合は、通常「遺産分割協議書」を作成します。
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協議が整わない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停・審判を請求できます(民法第907条)。
2) 遺産分割の禁止期間
被相続人は、遺言により分割方法を定めること、または分割を禁じる期間を設定することが可能です。期間は相続開始から5年以内に限られます(民法第908条)。
3) 遺産分割協議書
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遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が必要で、全員の印鑑証明書を添付します。
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遠隔地や多数の相続人の場合は、必要部数を作成して順次署名・押印することも可能です。
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遺言書が存在しても、全員の合意があれば協議書で財産を分割できます。
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相続人の中に相続しない人がいる場合は、「相続分なきことの証明書」(印鑑証明書添付)により署名押印を省略できます。
遺産分割協議書は、不動産登記や金融資産の払戻しに必要な重要書類です。紛失や改ざん防止のため、大切に保管してください。
4) 不動産の名義変更手続き(相続登記)
相続による不動産の所有権移転登記は、管轄の法務局(登記所)で申請します。必要書類は以下の通りです:
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登記申請書(正本、副本は法務局により指定)
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登記原因証明情報
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被相続人の戸籍謄本等(出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍)
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相続人全員の戸籍謄本または個人事項証明
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相続人全員の住民票(不動産を相続しない者は不要)
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被相続人の最後の住民票または戸籍附票(登記簿住所と一致する場合は不要)
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遺産分割協議書(印鑑証明書添付)または法定相続分による登記の場合は不要
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相続関係説明図(本籍・現住所・生年月日・不動産の相続関係を明記)
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固定資産評価証明書(市町村役場または都税事務所で取得)
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登録免許税:固定資産評価額 × 0.4%
必要書類は法務局ごとに細部が異なる場合があるため、事前確認を推奨します。
5) 相続の承認と放棄
承認・放棄の期間
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相続人は、相続開始を知った日から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかの意思表示をしなければなりません(民法第915条)。
単純承認
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相続財産を処分した場合や、期限内に限定承認・放棄の意思表示をしなかった場合は単純承認となります(民法第921条)。
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単純承認すると、被相続人の権利義務を無限に承継します(民法第920条)。
限定承認
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債務が多いかどうか不明な場合、プラス財産の範囲内で債務を支払う条件付き承認が限定承認です(民法第922条)。
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全相続人の共同申述が必要で、家庭裁判所に財産目録を提出します(民法第923条)。
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家庭裁判所は相続財産管理人を選任し、債権者や受遺者に通知します。
相続放棄
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債務超過などの場合、相続放棄が可能です(民法第938条)。
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放棄は、申述書を家庭裁判所に提出し、3か月以内に行う必要があります。
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放棄者は初めから相続人でなかった扱いとなり(民法第939条)、代襲相続も発生しません。
東京家庭裁判所では、相続人が必要書類を持参すれば即日審判手続も可能です。
6) 特別代理人
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親権者と未成年子が利害相反する場合、家庭裁判所に特別代理人を請求する必要があります(民法第826条)。
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遺産分割協議に未成年者が関与する場合、親権者はこの手続きを行わなければなりません。
7) 不在者の財産管理人と特別縁故者
行方不明の相続人
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相続人が行方不明の場合、利害関係人は家庭裁判所に財産管理人の選任を請求できます(民法第25条)。
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財産管理人は行方不明相続人に代わり、遺産分割協議や家庭裁判所の許可に基づき財産処分が可能です。
相続人不存在と特別縁故者
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相続人が不明または存在しない場合、利害関係人は家庭裁判所に財産管理人の選任を請求します(民法第952条)。
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相続人がいない場合の相続財産は法人(国)に帰属します(民法第951条)。
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相続人不在で、かつ特別の縁故者(内縁の配偶者、事実上の養子、被相続人を看護した者など)がいる場合、家庭裁判所が適当と認めると、財産の全部または一部を与えることができます。
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