相続において本当に重要となる「タイミング」の問題
― 放置されがちな相続と、将来のリスク ―
相続についてご相談を受ける中で、常々感じることの一つが、「相続手続きをいつ行うか」というタイミングの問題です。
相続が開始すると、相続税が発生する場合には、相続開始から10か月以内に申告・納付を行う必要があります。一方で、相続税が発生しない場合や、不動産があっても直ちに名義変更を行わなくても日常生活に支障がないケースも少なくありません。
例えば、亡くなったご主人名義の自宅に奥様がそのまま住み続けている場合や、お子様が複数いるものの、不動産を売却・利用する予定が特にない場合などです。また、預貯金についても、金融機関所定の手続きを行うことで、一定範囲で払戻しを受けられることがあります。
このような状況では、世間でよく耳にする「相続手続きは大変だ」という話が、あまり現実味をもって感じられないことも多いでしょう。
「今は困らない相続」が、将来問題になる理由
確かに、相続開始直後においては特段の問題が生じないケースも少なくありません。同様の状況にあるご家庭は、現在でも多く見受けられます。
しかし、このような相続を長期間放置した結果、次の相続(いわゆる二次相続)が発生した段階で、初めて深刻な問題が表面化するケースが非常に多くなっています。
放置された相続が実際に問題化する例
例えば、
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不動産の名義を変更しないまま年月が経過し、相続人が増えてしまった
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相続人の一部が死亡・転居し、連絡が取れなくなった
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売却や担保設定をしようとして初めて、全員の同意が必要だと分かった
といったケースです。
当初は「何も困らない」と感じていた相続が、時間の経過とともに、解決に大きな労力と費用を要する問題へと変化してしまいます。
相続登記義務化という大きな制度改正
現代の相続において、特に注意すべき点が相続登記の義務化です。
令和6年(2024年)4月1日から、不動産を相続した場合には、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが法律上義務付けられました。正当な理由なくこれを怠った場合、過料の対象となる可能性があります。
これにより、「名義変更をしなくても当面困らないから放置する」という従来の考え方は通用しなくなっています。
相続登記は、将来のための任意の手続きではなく、現行法上の義務となりました。
遺言書がある場合・ない場合の大きな違い
相続手続きの難易度を大きく左右するのが、遺言書の有無です。
遺言書がない場合、相続人全員による遺産分割協議が必要となり、相続人の人数が多いほど、また関係性が複雑であるほど、調整は困難になります。
一方、遺言書がある場合には、原則として遺言の内容に従って相続手続きを進めることができるため、
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相続人間の話し合いが不要になる
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手続きが迅速に進む
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将来のトラブルを未然に防ぎやすい
といった大きなメリットがあります。
特に、不動産を誰に承継させるかを明確にしておくことは、実務上極めて重要です。
相続登記義務化に対応するための現実的な対策
相続登記義務化に対応するためには、相続発生後に慌てて対応するのではなく、早い段階から準備を進めておくことが重要です。
具体的には、
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不動産の名義や数を把握しておく
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相続関係が複雑になりそうな場合は、遺言書を作成しておく
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相続発生後は、速やかに相続人と不動産の扱いを整理する
といった対応が有効です。
「心配な相続」と「心配の少ない相続」
このように見ていくと、「心配な相続」と「心配の少ない相続」の違いは、残された家族の将来をどこまで見据えて準備しているかにあると言えるでしょう。
将来の負担や紛争の可能性を考え、早めに対策を講じる相続は「心配な相続」であり、結果として家族にとっては安心につながります。
一方で、後のことはすべて相続人に任せると割り切る相続は、当事者にとっては「心配の少ない相続」かもしれませんが、残された家族に大きな負担を残すこともあります。
特に、お子様のいないご夫婦の場合には、配偶者の将来や次の相続関係を見据えた対策が不可欠であり、実務上は多くのケースが「心配な相続」に該当するといえるでしょう。
まとめ
相続は、「困ってから考えるもの」ではなく、「困らないように整えておくもの」へと変わりつつあります。
相続登記義務化をはじめとする制度改正を踏まえ、早期の遺言書作成や相続手続きの整理は、残された家族への大きな配慮となります。
