遺言書と遺産分割協議書の違い

遺言書と異なる相続はできるのか

たとえば、相続人が三人兄弟であり、
遺言書において「長男がすべての財産を相続する」と定められていたとします。

しかし、長男自身が
「兄弟三人で公平に分けたい」
と考える場合も、実務上は少なくありません。

このような場合、必ずしも遺言書の内容に従わなければならないわけではありません


相続人全員の合意があれば、遺言と異なる分割も可能

遺言書は、被相続人の最終意思として最大限尊重されるべきものですが、
相続人全員が合意すれば、遺言内容と異なる遺産分割を行うことが可能です。

この場合のポイントは、

  • 相続人「全員」の合意であること

  • 一部の相続人だけで決めることはできないこと

です。

相続人全員の合意に基づき、

  • 遺言で指定された相続分を変更する

  • 遺言による承継を前提とせず、改めて遺産分割協議を行う

といった対応が可能となります。


遺言は絶対ではありません

一般に、遺言書は
「財産を残す人の絶対的な意思」
と捉えられがちですが、実務上はそう単純ではありません。

遺言の内容が、

  • 相続人にとって著しく不合理である

  • 現実的に実行が困難である

  • 相続人全員の意向と大きく異なる

といった場合には、
相続人間の話し合いによって、より現実的で有効な分割方法が選択されることも少なくありません

たとえば、
相続人自身が財産を承継するよりも、
社会的に有意義な使い方をしたいと考えた場合には、相続人全員の合意により、遺産を自治体や公益団体などへ寄付することも可能です。


負債の相続を考えると理解しやすい点

この点は、負債(借金)の相続を考えると理解しやすいでしょう。

相続では、原則として、
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金)も相続の対象となります。

もっとも、相続人は、

  • 相続放棄をすることで、借金の相続を免れる

  • 相続放棄をせず、相続人が協力して債務を支払う

といった選択をすることができます。

このように、
相続は法律に基づく制度でありながら、相続人の意思を反映させる余地が残された柔軟な制度でもあります。


実務上のまとめ

相続は、
「法律どおり」「遺言どおり」
に進めなければならない、硬直した手続という印象を持たれがちです。

しかし実際には、

  • 遺言があっても相続人全員の合意で変更できる場合がある

  • 相続人の意思によって、より望ましい形で遺産を活用できる

という柔軟性が認められています。

そのため、
遺言書があるからといって、必ずしも一つの選択肢しかないわけではありません
具体的な対応については、専門家に相談しながら進めることで、無用なトラブルを避けることができます。

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