孫に財産を残すことはできるのか
― 相続と遺贈の違い、実務上の注意点 ―
先日、お電話で次のようなご質問をいただきました。
最近では80歳を超える方でもインターネットを利用される方が増えていますが、
たまたま当サイトをご覧になり、お電話をくださったとのことでした。
公的機関の無料相談で、
「お子さんには相続できますが、お孫さんは少し問題がありますね……」
と言われ、不安になり、いわゆるセカンドオピニオンとしてご相談されたそうです。
孫は「相続人」にはなりません【法的整理】
まず、法的な整理をしておきましょう。
民法上の相続人は、
配偶者および一定の血族(子、直系尊属、兄弟姉妹など)に限られています。
原則として、孫は相続人にはなりません
(※子が既に死亡している場合の代襲相続を除きます)。
そのため、
「孫に相続させる」という表現は法律上は正確ではなく、
正しくは 「孫に遺贈する」 ことになります。
相続と同様の効果は実現できます
もっとも、孫が相続人でないからといって、
財産を残せないわけではありません。
遺言書によって、
-
特定の財産を孫に遺贈する
-
全財産または一部を孫に遺贈する
と定めることで、
相続と実質的に同じ効果を生じさせることは可能です。
無料相談で「孫は相続人になれない」と説明されたのも、
この法的な意味においては、決して誤りではないと考えられます。
実務上の重要な注意点 ― 親が財産を管理するリスク
ここで、士業として特に注意していただきたい点があります。
それは、
孫に遺贈した財産が、親(=相続人である子)によって事実上管理されるケース
です。
現実問題として、
-
孫が未成年である
-
親が法定代理人として財産管理を行う
-
その結果、親の生活費や借金の返済に使われてしまう
といった事態が生じる可能性は、決して低くありません。
「せっかく孫のために残した財産が、結果的に親のために消えてしまう」
というのは、実務上、十分に想定されるリスクです。
対策① 財産管理人の指定(遺言による設計)
このような事態を防ぐ方法の一つとして、
-
孫が一定年齢に達するまで
-
信頼できる第三者を財産管理人として指定し
-
その者に財産を管理させる
という内容を、遺言書に明確に盛り込む方法があります。
遺言書の中で、
-
管理期間
-
管理方法
-
管理人の権限
-
孫に財産を引き渡す時期
などを具体的に定めておくことで、
遺言者の意思をより確実に実現することが可能になります。
対策② 家族信託・遺言信託という選択肢
近年では、
遺言書だけでなく、
-
家族信託
-
遺言信託
といった制度を活用するケースも増えています。
これらは、
単なる「遺贈」よりも柔軟な財産管理・承継が可能であり、
-
未成年の孫への財産承継
-
長期的な管理
-
使途の限定
といったニーズに適した仕組みです。
詳細については、関連ページをご参照ください。
対策③ 遺言執行者の指定
また、
信頼できる遺言執行者を指定することも、有効な対策の一つです。
遺言執行者には、
-
遺贈の実行
-
財産の引渡し
-
管理に関する一定の実務
を担ってもらうことができ、
遺言内容の確実な実現につながります。
まとめ
-
孫は原則として相続人ではない
-
遺言による「遺贈」で財産を残すことは可能
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未成年の孫への遺贈には、財産管理リスクがある
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遺言設計+管理方法の指定が極めて重要
-
場合によっては家族信託等も有効
「孫に残したい」という想いを、
トラブルなく、確実に実現するためには、制度の使い分けが不可欠です。
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