遺贈と死因贈与の違いとは ― 法的性質と実務上の使い分け
遺贈と死因贈与は、いずれも
「本人の死亡を原因として、無償で財産を移転させる行為」
という点では共通しています。
しかし、法的性質と実務上の取り扱いには、重要な違いがあります。
遺贈とは
遺贈とは、
遺言によって、死亡時に一定の財産を無償で与える行為です。
最大の特徴は、
👉 遺言者の一方的な意思表示(単独行為)
で成立する点にあります。
遺贈のポイント
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遺言書に記載して行う
-
相続開始(死亡)と同時に効力が生じる
-
相手方(受遺者)の生前の承諾は不要
-
相続人以外に与える場合に使われることが多い
なお、実務上は
「遺贈」という言葉は相続人以外に財産を与える場合に用いられることが多いですが、
相続人に対して遺贈することも法律上は可能です。
死因贈与とは
一方、死因贈与は、
贈与者と受贈者の合意によって成立する契約です。
つまり、
-
贈与する意思表示
-
それに対する受贈者の承諾
この双方の意思が一致して初めて成立します。
口約束でも成立するが、実務上の注意点
死因贈与は、法律上、口約束でも成立します。
しかし、
書面によらない死因贈与は、履行前であれば、いつでも撤回可能
とされています。
そのため、実務上は、
👉 死因贈与を選択する場合は、公正証書で作成することが必須
といってよいでしょう。
死因贈与が遺贈より有利となるケース
死因贈与には、
遺贈にはない実務上のメリットが存在します。
代表的なのが、不動産の仮登記です。
仮登記が可能となるケース
死因贈与契約を公正証書で作成し、
「贈与者は、受贈者が仮登記手続きを単独で申請することを承諾する」
という趣旨の記載がある場合、
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公正証書の正本または謄本
-
もしくは、贈与者の印鑑証明書を添付した承諾書
を用いて、
👉 受贈者が単独で仮登記申請を行うことが可能となります。
これは、遺贈にはない大きな実務上の利点です。
ただし、仮登記には限界がある
注意点として、
死因贈与は、贈与者の生前であれば撤回可能です。
したがって、
-
仮登記をしていても
-
贈与者が死因贈与を撤回すれば
👉 仮登記の効力は失われます。
仮登記はあくまで「将来の権利取得を保全する手段」であり、
権利を確定させるものではない点に注意が必要です。
遺贈と死因贈与の使い分け
| 観点 | 遺贈 | 死因贈与 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 単独行為 | 契約 |
| 成立要件 | 遺言のみ | 双方の合意 |
| 生前の拘束力 | なし | あり(ただし撤回可) |
| 仮登記 | 不可 | 条件付で可能 |
| 実務の安定性 | 高い | 公正証書前提 |
まとめ
-
安定性・確実性を重視するなら 遺贈(公正証書遺言)
-
不動産の保全や事前調整を重視するなら 死因贈与(公正証書)
-
いずれも書面化、とくに公正証書化が実務上は必須
遺贈と死因贈与は、
どちらが優れているかではなく、どの場面で使うかが重要です。
財産の内容、相手方との関係、相続関係全体を踏まえた上で、
適切な手法を選択する必要があります。
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