寄与分の無い親への相続はどうすればよいですか

一人息子に相続させた結果、親が何も相続できなくなるケース

Aさんご夫婦には、一人息子がいました。
Aさん(母)は、「夫が亡くなった後は、息子に面倒を見てもらうつもりだから」という思いから、夫の財産のすべてを一人息子に相続させる内容の遺言を作成しました。

ところが、その後、その一人息子が突然亡くなってしまいます。

すると、息子の妻(Aさんの嫁)は
「夫の財産はすべて私が相続します。お義母さんには相続する権利はありません」
と主張してきました。

このような場合、一人息子を育ててきた母親には、本当に何の権利もないのでしょうか。

結論から申し上げると、法律上、そのとおりであり、原則として相続する権利はありません。


■ なぜ母親は相続できないのか(法的根拠)

相続人となるかどうかは、民法で厳格に定められています。

民法第887条により、被相続人(亡くなった方)の直系卑属(子・孫など)が第一順位の相続人とされており、
配偶者は常に相続人となります(民法第890条)。

本件では、

  • 被相続人:一人息子

  • 相続人:その配偶者(妻)

となり、母親は法定相続人に該当しません。
そのため、相続分を主張すること自体ができないのです。


■ 「寄与分があるのでは?」という疑問について

「息子を育て、生活を支えてきたのだから、寄与分を主張できるのではないか」
と考えられる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、この点についても結論はです。

寄与分(民法第904条の2)は、
**被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした「法定相続人」**に認められる制度です。

母親は本件では法定相続人に該当しないため、
寄与分を主張することはできません。


■ 実際に起こっている現実的なトラブル

「そのようなケースは滅多にない」と思われるかもしれませんが、
実際には当事務所でも複数回、同様の相談を受けています。

特に、

  • 夫が先に亡くなる

  • 「妻は生活できるだろう」「子が面倒を見るだろう」
    という考えから、全財産を一人息子(長男)に相続させる

このような遺言内容は、決して珍しいものではありません。

しかし、その後に想定外の事態(子の早逝)が起こると、
配偶者(母)が法的に無権利となる深刻な事態を招くことになります。


■ このようなトラブルを防ぐために必要な対策

このような事態を防ぐためには、
財産を相続する側(この場合は一人息子)が、さらに遺言書を作成しておくことが重要です。

例えば、

「自分が母より先に死亡した場合には、
自宅不動産および預貯金〇〇円を母に遺贈する」

といった内容の遺言書を作成しておくことで、
母親の生活基盤を法的に確保することが可能となります。


■ 実務的な注意点

遺言は「今の家族関係」だけでなく、
将来起こり得る不測の事態まで見据えて設計する必要があります。

特に、

  • 一人っ子

  • 全財産を子へ集中させる内容

  • 配偶者の生活保障を感情的判断に委ねているケース

これらに該当する場合は、専門家による遺言内容のチェックが不可欠です。

関連するページ