アパートの連帯保証人の相続

連帯保証人と相続 ― 見落とされがちな重大リスク

借金の連帯保証人となり、深刻な経済的負担を負う――
このような話は、芸能ニュース等でも度々目にします。

法律上、連帯保証人は主債務者とほぼ同一の責任を負うため(民法第454条)、
安易に引き受けるべきものではありません。


1 連帯保証人の法的地位(基本原則)

連帯保証人は、

  • 催告の抗弁権

  • 検索の抗弁権

  • 分別の利益

をいずれも持たず(民法第452条、453条、454条)、
債権者から、いきなり全額の請求を受ける立場にあります。

実務上は、

「連帯保証人になる=自分が借金をしたのと同じ」

と説明されるのが一般的です。


2 賃貸借契約における連帯保証人の問題

借金の保証は慎重になる一方で、
賃貸アパートや事務所の連帯保証人については、比較的軽く考えられがちです。

しかし、賃貸借契約における連帯保証人も、
法的には通常の連帯保証人と変わりません。

  • 家賃滞納があれば即請求

  • 原状回復費用の負担

  • 火災・事故による損害賠償責任

など、借主と同一の責任を負います。


3 2020年民法改正による重要な変更点(極めて重要)

2020年4月施行の改正民法があります。

(1)個人の根保証契約には「極度額」の定めが必須

賃貸借契約における連帯保証人の多くは、
**個人による「根保証契約」**に該当します。

改正民法第465条の2により、

極度額(保証の上限額)の定めがない個人根保証契約は無効

とされました。

つまり、
極度額の記載がない連帯保証契約は、そもそも法的に無効
となる可能性があります。

※古い契約書や更新時の書面には、注意が必要です。


4 連帯保証人は「一方的に辞める」ことができない

連帯保証人になった後、

  • 「やはり不安になった」

  • 「事情が変わった」

といった理由で、一方的に保証人を辞めることはできません

契約上、

  • 貸主の承諾

  • 代替保証人の提供

が必要となりますが、実務上、これが認められるケースは極めて稀です。

結果として、連帯保証人は、

  • 家賃が滞納されていないか常に気にする

  • 保険加入状況を確認する

  • 借主の生活状況を事実上「管理」する

という、不本意な立場に置かれることになります。


5 連帯保証債務は「相続される」

ここで、相続との関係が問題になります。

連帯保証債務は、金銭債務である以上、原則として相続の対象です(民法第896条)。

つまり、

  • 親が連帯保証人だった

  • その親が死亡した

場合、保証債務は相続人に承継されます。


6 相続放棄という選択肢と判断の難しさ

保証債務を引き継ぎたくない場合、
相続人は 相続放棄 を選択することができます(民法第915条)。

しかし、実務上は、

  • 財産は残っている

  • 借金はない

  • ただし「連帯保証人」になっている

というケースが、判断を非常に難しくします。

特に賃貸借契約の場合、

  • 現時点では滞納がない

  • 将来、問題が起こるか分からない

という**「潜在的リスク」**が問題となります。


7 保証債務の存在を知らずに相続する危険性

連帯保証債務は、

  • 借主がきちんと支払っていれば表面化しない

  • 通帳や借用書からは分からない

という特徴があります。

そのため、相続開始後に初めて、

「実は連帯保証人だった」

と判明するケースも少なくありません。

この場合でも、**相続放棄の熟慮期間(原則3か月)**が経過していれば、
原則として保証債務を免れることはできません。


まとめ

連帯保証人、とりわけ賃貸借契約の保証人は、

  • 軽く引き受けられがち

  • しかし責任は極めて重い

  • しかも相続によって承継される

という、見落とされやすい重大リスクを含んでいます。

相続実務においては、

  • 被相続人が保証人になっていないか

  • 契約書に極度額の定めがあるか

  • 相続放棄を検討すべきか

を、早期に確認することが不可欠です。