名義預金と信託をめぐる法的・税務上の注意点
1 名義預金とは何か
名義預金とは、
預金の名義は子ども等であるものの、実質的な所有者が親である預金
をいいます。
たとえば、
-
親が自分の収入や資産を原資として
-
子ども名義の口座を開設し
-
通帳・印鑑を親が管理し
-
子ども自身が預金の存在や使途を把握していない
このような場合、形式上は「子ども名義」であっても、
税務上は親の財産(=名義預金) と認定されます。
その結果、
親の死亡時には 相続財産に含めて相続税が課税 されます。
2 名義預金が相続財産となる理由(法的・税務的根拠)
相続税法では、
名義ではなく「実質的に誰に帰属しているか」 によって課税関係が判断されます。
-
贈与の成立には
-
贈与者の意思
-
受贈者の受諾
が必要(民法549条)
-
-
さらに、贈与後は
-
受贈者が自由に管理・処分できる状態
が必要とされています
-
これらが満たされない場合、
「贈与は成立していない」
→ 親の財産と評価
→ 相続税の課税対象
となります。
3 「信託を使えば課税を免れる」という誤解
時折、
信託を使えば、名義預金でも相続税がかからない
という説明を見聞きすることがありますが、
この理解は極めて危険です。
結論から言えば、
信託を使っても、相続税を「逃れる」ことはできません。
信託は 課税逃れの制度ではありません。
4 信託の基本構造(民事信託・家族信託)
信託とは、
信託契約により、財産の管理・処分を託す制度 です。
基本構造は次の三者関係です。
-
委託者:財産を信託する人
-
受託者:財産を管理・処分する人
-
受益者:信託財産から利益を受ける人
重要なのは、
税務上の課税は「誰が受益者か」で判断される
という点です。
5 子を受益者・親を受託者とした場合の課税関係
ご質問のように、
-
子どもを「受益者」
-
親を「受託者」
とする信託契約を締結した場合、
その時点で
受益権が子どもに移転したものとして、原則「贈与税課税」
が生じます。
つまり、
-
名義預金 → 相続税課税
-
信託に切り替え → 贈与税課税
となり、
単に課税のタイミングが変わるだけ です。
「課税を免れる」わけではありません。
6 なぜ「信託だと問題ない」と誤解されるのか
この誤解の背景には、
-
財産の管理を親が行っていても
-
信託契約に基づく管理であれば
-
「管理=所有」と評価されない
という点があります。
つまり、
-
名義預金
→ 管理している=実質所有 -
信託
→ 管理しているが、契約に基づく
という 民事上の整理の違い があるだけです。
しかし、
税務上は必ず「受益者課税」が原則 であり、
信託だから非課税、という結論にはなりません。
7 信託財産の管理方法と実務上の注意点
信託を行う場合には、形式面も極めて重要です。
-
不動産
→ 信託登記 が必須 -
預貯金
→ 信託専用口座 による分別管理 -
契約内容
→ 受益者・信託目的・管理方法を明確化
これらが不十分な場合、
-
名義預金と同視される
-
信託自体が否認される
といったリスクもあります。
8 まとめ
-
名義預金は、原則として相続財産となる
-
信託は「課税逃れ」の制度ではない
-
信託を使っても、贈与税・相続税の問題は必ず生じる
-
信託の本来の目的は
「管理・承継の仕組み作り」であり、節税目的ではない
信託は非常に有効な制度ですが、
使い方を誤ると、かえって税務リスクが高まる 分野でもあります。
名義預金・信託を検討する場合は、
必ず 税務と法務の両面からの検討 が不可欠です。
