遺言書が改ざんされた場合の効力と相続欠格について
遺言書が改ざんされていた場合、その改ざん部分は、遺言者の真意に基づくものではないため、無効となります。
もっとも、改ざんがあったからといって、遺言書全体が当然に無効となるわけではありません。
改ざん部分を除いた内容、あるいは改ざん前の遺言書が、遺言者により有効に作成されていたことが確認できる場合には、可能な限り遺言者の最終意思を実現する方向で解釈・手続きが進められます。
これは、遺言制度の根本目的が「遺言者の意思の尊重」にあるためです。
改ざんがあった場合の実務上の手続き(検認)
改ざんの有無や内容を明確にするためには、遺言書の現状を確定させる手続きが不可欠です。
そのため、法定の手続きとして、家庭裁判所に遺言書を提出し、検認を請求する必要があります。
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根拠条文:民法1004条1項
検認とは、
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遺言書の形状
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記載内容
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日付、署名、訂正の有無
などを裁判所が確認し、後日の偽造・変造を防止するための証拠保全手続きです。
検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではない点に注意が必要です。
※重要な法改正点(2019年~)
2019年7月に創設された自筆証書遺言保管制度(法務局保管)を利用している遺言書については、
家庭裁判所の検認は不要とされています(民法1004条2項)。
遺言書を偽造・変造等した者の法的責任(相続欠格)
遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者については、法律上、重大な制裁が定められています。
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根拠条文:民法891条5号(相続欠格)
同条により、以下の行為を行った者は、相続人となる資格を失います。
遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
推定相続人が改ざんした場合
推定相続人が遺言書を改ざんした場合、
相続欠格に該当すれば、法定相続分を含め、一切の相続権を失います。
ただし、判例・通説上、
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単なる過失では足りず
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自己又は第三者の不当な利益を図る目的(害意)が必要
と解されています。
この点が認められない場合には、相続欠格が成立しない余地もあります。
受遺者が改ざんした場合
一方、相続人ではない受遺者(遺贈を受ける者)が遺言書を改ざんした場合には、
受遺者としての資格を失い、当該遺贈を受けることができなくなります。
この違いは、
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相続人は、遺言がなくても法定相続分という権利を有している
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受遺者は、遺言によってのみ権利を取得する
という法的立場の違いに基づくものです。
まとめ ― 改ざんリスクを避けるために
以上のとおり、
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改ざん部分のみが無効となる場合がある
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しかし、改ざんが疑われると、検認・調査・紛争のリスクが高まる
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改ざん行為には、相続欠格という極めて重い制裁がある
という点から、遺言書は「改ざんされない形」で残すことが極めて重要です。
その意味で、
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原本が公証役場に保管され
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内容の真正が強く担保される
公正証書遺言は、現在においても最も安全性の高い遺言方式であると言えるでしょう。
