相続時精算課税

相続時精算課税制度の概要(法的根拠)

相続時精算課税制度は、
租税特別措置法第70条の2以下 に基づく制度です。

原則として、

  • 贈与者:60歳以上の父母または祖父母

  • 受贈者:18歳以上の子または孫(※令和4年改正)

の間で選択することができます。

この制度を選択すると、

  • 贈与時点では
    累計2,500万円まで贈与税が非課税

  • 2,500万円を超える部分については
    一律20%の贈与税が課税

  • 相続開始時に、
    贈与時の価額で相続財産に加算し、相続税として精算

される仕組みとなっています。

なお、一度この制度を選択すると、暦年課税へ戻すことはできません


メリット(長所)

① 生前に「実質的な遺産分割」ができる

最大のメリットは、

生前に、誰に・何を渡すかを、確実に実現できる

点にあります。

遺言書とは異なり、贈与によって財産の帰属を確定させるため、

  • 将来の相続争いを避けたい

  • 特定の子に確実に渡したい

といったケースでは、有効な手段となります。

② 住宅取得資金などへの活用がしやすい

親にとって、

  • 生活に直ちに必要ではない余剰資産を

  • 子の住宅取得資金などに活用できる

点も、実務上よく利用される理由の一つです。

(※住宅取得等資金の非課税制度とは別制度であり、併用の可否には注意が必要です)

③ 将来値上がりが見込まれる財産には有利

相続時精算課税では、
**相続時に加算される価額は「贈与時の価額」**です。

そのため、

  • 自社株

  • 将来的に価値上昇が見込まれる不動産

などについては、

価値が低い時点で贈与 → 高くなってから相続が発生

という場合、
相続税評価額を抑えられるというメリットがあります。


デメリット(短所・注意点)

① 贈与後に価値が下がっても「贈与時価額」で精算される

最大の注意点は、

相続時に、実際の価値ではなく「贈与時の価額」で精算される

点です。

たとえば、

  • 贈与時:評価額1,000万円

  • 相続時:評価額300万円

となっていても、
相続税計算上は1,000万円として扱われます

特に、

  • 建物

  • 一般的な居住用不動産

のように、時間とともに価値が下がる財産については、
不利に働く可能性があります。

② 相続税がかからない場合は、制度の意味が薄れる

そもそも、

  • 相続税の基礎控除額の範囲内で相続が収まる場合

には、
相続時精算課税制度を利用するメリットは限定的です。

むしろ、

  • 将来値下がりする財産

  • 小規模な資産

については、
制度を選択したことで不利になるケースもあります。

③ 一度選択すると暦年課税に戻れない

相続時精算課税制度は、
贈与者ごとに選択する制度ですが、

一度選択すると、その贈与者からの贈与については
生涯にわたり暦年課税へ戻すことができません。

この点を十分理解せずに選択すると、
後戻りができず、後悔するケースも少なくありません。


まとめ ― 制度選択は「相続全体」を見据えて

相続時精算課税制度は、

  • 生前対策として有効な場合もある一方

  • 財産の内容・相続人構成によっては不利にもなる

使いどころが明確に分かれる制度です。

「節税になる」というイメージだけで選択するのではなく、

  • 将来の相続税の見込み

  • 贈与する財産の性質(値上がり・値下がり)

  • 他の相続人との関係

を総合的に検討する必要があります。

具体的な税額計算や制度の詳細については、
国税庁ホームページの最新情報をご確認いただくか、
税理士等の専門家へ事前に相談されることを強くお勧めします。