第三者が介入すると長期化しやすい理由
― 相続人と第三者の法的立場の違い ―
実務の中でよく感じることですが、
相続人本人ではない「第三者」、たとえば
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相続人の配偶者
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叔父・叔母
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同居していた親族
などが前面に出てくるケースでは、相続手続が長期化する傾向があります。
1.相続は本来、法律で「着地点」が決まっている
遺言書が存在しない場合、相続は
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民法に定められた法定相続人
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法定相続分(民法900条)
に基づいて行われます。
どれほど感情的な対立があっても、
法律上の「落としどころ」は、ある程度予測可能です。
2.揉める原因は「法律」よりも「感情」
実務上、問題となりやすいのは、
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遺言書の記載が曖昧
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生前贈与が多く、不公平感が強い
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被相続人の介護や生活支援への評価
といった点です。
これらは、法律論というよりも、
「気持ちとして納得できない」
という感情の問題に起因することが多く見られます。
もっとも、これらの点についても、
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特別受益(民法903条)
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寄与分(民法904条の2)
といった制度が用意されており、
最終的には法律に基づいた整理が可能です。
3.第三者が関与すると何が変わるのか
問題が複雑化、あるいは長期化しやすくなるのは、
相続人ではない第三者が実質的に交渉に関与する場合です。
典型例としては、
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気の弱い相続人に代わって、配偶者が前面に出る
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「本人は要らないと言っている」と第三者が主張する
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相続人間でまとまった話が、最終段階で覆される
といったケースが挙げられます。
4.第三者には「決定権」はない
重要な点として、
遺産分割協議は、相続人全員によってのみ成立する
という原則があります(民法907条)。
遺産分割協議書は、
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相続人全員が署名・実印押印する
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一人でも欠ければ無効
という極めて厳格な要件が課されています。
したがって、
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相続人の配偶者
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親族
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同居人
といった第三者には、法的な発言権・決定権はありません。
しかし現実には、
「家族だから」
「長年一緒にいたから」
という理由で、
事実上の代理人のように振る舞うことがあり、
それが話し合いを振り出しに戻してしまう原因になります。
5.「複雑」よりも「時間がかかる」
第三者が関与する相続は、
法律的に特別難しいわけではありません。
むしろ問題は、
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話が何度も蒸し返される
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すでに合意した内容が覆る
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感情論が増幅される
といった点にあり、
「複雑」というより「時間が余計にかかる」
という表現の方が実態に近いでしょう。
6.実務上の本音
遺産分割協議は、相続人同士で冷静に話し合えれば、多くの場合、一定の期間内に収束します。
しかし、
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協議書作成の最終段階で
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相続人全員が第三者同席で集まった結果
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再び白紙に戻る
という場面を、実務では何度も目にします。
そのため、第三者の存在が見えた段階で、
「長引きませんように…」
と、内心で思ってしまうのも、正直な実務感覚と言えるでしょう。
まとめ
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相続の結論は、法律上ある程度決まっている
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問題の多くは「感情」から生じる
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第三者には遺産分割の決定権はない
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しかし実務上、第三者関与は手続きを長引かせやすい
相続手続を円滑に進めるためには、
「誰が相続人で、誰が当事者でないのか」
を、早い段階で整理しておくことが極めて重要です。
