骨董品・美術品の相続財産評価について
― 相続税・遺産分割実務における考え方 ―
近年、骨董品や美術品の収集を趣味とされている方は少なくありません。
しかし、これらが相続財産となった場合、その評価方法は分かりにくく、実務上も判断に悩む分野の一つです。
1.相続財産としての骨董品の位置づけ
骨董品・美術品は、相続税法上、
-
動産(一般動産)
-
家財道具類
に該当し、原則として相続財産に含まれます。
ただし、**販売目的で継続的に保有している場合(事業用在庫等)**を除き、通常は事業用資産とは扱われません。
2.評価の基本原則(相続税評価)
相続税評価における原則は、
相続開始時点における時価評価
です(相続税法第22条)。
骨董品・美術品については、国税庁「財産評価基本通達」により、次のように整理されています。
販売用として所持している場合を除き、
売買実例価額、精通者(鑑定人)の意見価格等を参考にして評価する
とされています。
3.実務上の問題点
(1)相続人の納得が得られるか
評価額そのもの以上に問題となるのが、
-
相続人全員がその評価額に納得できるか
という点です。
骨董に詳しくない相続人からすれば、
-
「ただの古い壺」
-
「二束三文にしか見えない置物」
に見えることも珍しくありません。
一方、被相続人が高額で購入していた場合、その購入価格をそのまま評価額としてよいのか、という疑問も生じます。
(2)真贋の問題(本物か偽物か)
骨董品特有の問題として、
-
本物だと思って購入したが、実際は贋作だった
というケースも否定できません。
この場合、
-
過去の購入価格
-
売買実例価格
をそのまま評価の根拠としてよいかは、慎重な判断が必要となります。
4.実務上の対応方法
実務では、以下のような対応が取られることが多いです。
(1)相続人全員で評価額を確認・合意する
もっともトラブルが少ない方法です。
遺産分割協議書において、評価額を明示して合意しておけば、後日の紛争防止につながります。
(2)相続人代表者に評価を一任する
相続人全員の同意のもと、代表者を選定し、その判断に委ねる方法です。
(3)客観資料を参考にする
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美術年鑑
-
市場価格資料
-
オークション落札実績
など、第三者的な資料が存在する場合には、それを基準とすることもあります。
5.鑑定を行う場合の注意点
鑑定人による鑑定を行う場合、
-
鑑定費用が発生する
-
評価額が必ずしも高く出るとは限らない
という点に注意が必要です。
極端な例では、
鑑定費用5万円
→ 鑑定結果:市場価値1,000円
というケースも、実務上まったく珍しくありません。
そのため、鑑定費用と想定評価額のバランスを事前に検討する必要があります。
6.「家財一式」として扱われるケースについて
実務感覚として、
-
美術年鑑等に掲載されるような著名作家の作品
-
市場価値が明確な骨董品
を除き、その他の骨董類については、
-
家財道具一式として包括的に扱われ
-
明確な評価を行わず処理されている
ケースも少なくありません。
ただし、相続税申告が必要な場合には、
-
税務署から評価根拠を求められる可能性
-
過小評価と判断されるリスク
があるため、安易な処理は注意が必要です。
7.まとめ
骨董品・美術品の相続評価は、
-
法令上の明確な算式が存在せず
-
実務判断と相続人間の合意が大きな比重を占める
分野です。
そのため、
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生前のうちに購入価格・由来・鑑定書等を整理しておく
-
遺言書で取得者を明確に指定する
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