実印押して印鑑証明書送ってきて・・

遺産分割と「実印・印鑑証明書」に戸惑う方が多い理由

― 突然の押印依頼が相続トラブルの火種になることも ―

事務所でよくいただくご相談の一つに、
「突然、実印と印鑑証明書が必要だと言われ、戸惑っている」
というものがあります。

相続手続に不慣れな方にとって、
「なぜ実印なのか」
「なぜ印鑑証明書まで必要なのか」
という点が分からないまま話が進むことは、強い不安を生みます。

遺産分割には「実印+印鑑証明書」が原則必要

遺言書がない場合、相続財産は 遺産分割協議 によって分けることになります。

この遺産分割協議は、

  • 相続人全員の合意が必要

  • 合意の内容を書面化したものが
    遺産分割協議書

となります。

そして、この協議書には、

  • 相続人全員の署名

  • 実印による押印

  • 各人の印鑑証明書の添付

が、実務上必須とされています。

これは法律上、

  • 遺産分割は相続人全員の「協議」によって成立する行為であり

  • 実印の押印は、その協議内容に真に同意した意思表示である

ことを明確にするためです。

なぜ戸惑いが生じるのか ―「何を協議するのか」が見えていない

戸惑いが生じる最大の理由は、
「何を協議するのか」が説明されていないまま、書類だけが送られてくる
点にあります。

書類を送る側からすれば、

  • 銀行や郵便局の解約書類

  • 不動産の名義変更に必要な書類

といった「事務手続」の一環という感覚かもしれません。

しかし、受け取る側からすれば、

  • どのような相続財産があるのか

  • その財産をどのように分けるのか

  • なぜ自分はその内容に同意する必要があるのか

が分からないまま、

「実印を押して、印鑑証明書を添付してください」

と言われることになります。

これは、通常の取引関係であれば、まず起こり得ない状況です。

親族間だからこそ起こる「説明不足」という問題

相続は親族間の手続であるため、

  • 「法律どおりだから問題にならないだろう」

  • 「身内なのだから、細かい説明は不要だろう」

といった、無意識の甘えが生じやすい分野でもあります。

しかし、突然書類を受け取った側にとっては、

  • 内容が分からない

  • 説明もない

  • それでも実印を求められる

という状況は、強い不信感を生みます。

この不信感こそが、

  • 本来、揉める必要のなかった相続を

  • 「揉める相続」へと変えてしまう最大の要因

となります。

「当然もらえる」という誤解が対立を生むことも

また、相続人の中には、

  • 自分が財産をもらって当然

  • 他の相続人は形式的に署名するだけ

と考えているケースも見受けられます。

しかし、相続は法律に基づく権利関係であり、

  • 法定相続分

  • 特別受益

  • 寄与分

などを考慮したうえで、全員が合意して初めて成立します。

「当然」という思い込みがあるほど、
説明不足や手続の進め方次第で、深刻な対立に発展することも少なくありません。