相続発生後の預貯金口座と「口座凍結」について

金融機関は、病院・役所・遺族等から死亡の事実を把握した場合
亡くなった方(被相続人)名義の預貯金口座について、**口座取引停止(いわゆる口座凍結)**の措置を取ります。

これについて、
「急に引き出せなくなって困る」「迷惑だ」
と感じられる方も少なくありません。

しかし、金融機関の立場からすれば、口座凍結は不可欠な措置です。


なぜ口座は凍結されるのか(法的背景)

被相続人が亡くなった時点で、

  • 預貯金は被相続人個人の財産ではなくなり

  • 相続財産として、相続人全員の共有状態に移行します

(民法896条)。

そのため、特定の相続人が単独で預貯金を引き出すことは、
他の相続人の権利を侵害する可能性があり、
金融機関としては、取引を停止せざるを得ません。


銀行は「自動的に」凍結するわけではない

重要な点として、
金融機関は、死亡の事実を把握した場合にのみ、口座を凍結します。

  • 銀行が独自に戸籍を調査することはありません

  • 情報源の多くは、遺族からの届出です

そのため、遺族から連絡がなければ、
口座が凍結されないまま残っているケースも少なくありません。


凍結されないまま放置される口座のリスク

実務上、

  • 電話料金

  • 公共料金

  • クレジットカード代金

などの自動引落しを止めたくないという理由で、
口座を凍結しないままにしている例も見受けられます。

しかし、このような対応は、

  • 他の相続人から
    「勝手に引き出しているのではないか」
    「使い込んでいるのではないか」

と疑念を持たれる原因になりかねません。

相続トラブルを避ける観点からは、早期に金融機関へ死亡届出を行い、口座を凍結することを勧めます。


相続人は預貯金の入出金履歴を確認できる

相談実務の中では、

「預貯金がいくら残っていたのか分からない」
「生前、どのような出入金があったのか知りたい」

という声を多く耳にします。

この場合、相続人であれば、金融機関に対して取引履歴の開示を求めることが可能です。

  • 相続人の立場を証明する書類を提出すれば

  • 過去の入出金明細や残高証明書の発行を受けられます

士業として、これらの調査手続きを代理で行うことも実務上よくあります。


【重要】2019年施行:預貯金の「仮払い制度」

2014年当時には存在しなかった制度として、
2019年7月1日施行の民法改正により、
相続人による預貯金の仮払い制度が導入されました。

民法909条の2(預貯金の払戻し制度)

相続開始後であっても、
遺産分割が成立する前に、一定額までであれば、
相続人が単独で預貯金の払戻しを受けることが可能です。

仮払い可能額の上限
  • 1金融機関あたり
    相続開始時残高 × 1/3 × 当該相続人の法定相続分

  • ただし、上限150万円

この制度は、

  • 葬儀費用

  • 当面の生活費

  • 被相続人の債務弁済

といった、緊急性の高い支出に対応するためのものです。


預貯金を解約する際の一般的な必要書類

相続手続により預貯金を解約・分配する場合、
一般的には、次の書類が求められます。

  1. 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍一式

  2. 相続人全員の戸籍謄本

  3. 相続人全員の印鑑証明書

  4. 金融機関所定の相続手続書類
     (相続人全員の署名・実印押印が必要)

  • 遺言書がある場合

  • 公正証書遺言や遺言執行者がいる場合

などには、提出書類が一部省略されることもあります。
あくまで一般的なケースの一例です。


残高調査のみであれば単独手続も可能

なお、

  • 残高証明書の取得

  • 取引履歴の照会

といった調査段階の手続きであれば、
相続人のうち一人で行うことが可能なケースが多くなっています。

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