相続紛争・問題の責任は親にあり!

相続争いの多くは「生前の準備」で予防できる

― 親の責任と法的視点から ―

相続が発生した際、兄弟姉妹間で争いが生じるケースは決して少なくありません。
しかし、実務の現場で多数の相続案件を見ていると、兄弟間相続の紛争の大半は、被相続人(親)の生前の準備次第で予防可能であったと感じることが多くあります。

あえて厳しい言い方をすれば、相続争いの原因の多くは、親の生前の対応に起因しているとも言えます。

もちろん、代襲相続などにより、想定外の相続人が発生するケースもあります。しかし、少なくとも「親から子への相続」に限れば、相続トラブルの責任の所在は、相続開始前の被相続人の行動や判断に大きく左右されるのが実情です。

以下、実務上よく見られる典型的な例を挙げて解説します。


1 生前の不用意な発言が争いの火種となる

「生前、父(母)が私にこう言っていた」

相続の場面で、極めて頻繁に耳にする言葉です。

高齢になると、被相続人は心身ともに弱くなり、日常的に世話をしてくれる子に対して、つい気を許して発言してしまうことがあります。
例えば、毎日のように顔を出す長女に対しては何も言わず、たまに訪ねてくる長男に対して、

「あの子(長女)は財産目当てだ。お前だけが頼りだ」

といった、いわゆる「リップサービス」をしてしまうケースです。

このような発言は、被相続人にとっては深い意味のない言葉であっても、相続開始後には、兄弟姉妹間の深刻な対立を招く原因となります。
仮に法的な争いに発展しなかったとしても、感情的なわだかまりが残る可能性は高いでしょう。

したがって、被相続人は、相続人となる子らに対し、不用意な差別的発言や誤解を招く言動を極力慎む必要があります。


2 財産状況の不透明さが不信感を生む

「別に隠しているつもりはなかった」

被相続人がそう思っていても、相続人全員が同じ認識とは限りません。

例えば、被相続人と同居していた長女が財産管理を手伝っていた場合、遠方に住む次女から見ると、

  • 「財産が思ったより少ない」

  • 「あの銀行の通帳を見た記憶があるが、遺産に含まれていない」

といった疑念を抱くことは、決して珍しいことではありません。

実務の現場では、相続人から思わず漏れ出るこうした言葉を、第三者として何度も耳にします。
多くの場合、悪意があるわけではなく、「情報が見えない」こと自体が不信感の原因となっているのです。

この点については、エンディングノート等を活用し、生前に財産の全体像を整理・可視化しておくことが極めて有効です。
もっとも、エンディングノート自体には法的効力はありませんので、後述する遺言書と併用することが重要です。


3 遺言書の活用と注意点(2019年以降の法改正を踏まえて)

相続紛争の予防策として、遺言書の作成が重要であることは言うまでもありません。
実際、本サイトでも遺言に関する解説が多くなっています。

ただし、遺言書は「書けばよい」というものではなく、内容次第では、かえって紛争を拡大させる危険性があります。

例えば、

「相続財産の3分の1を長男に相続させる」

といった記載です。

一見すると問題がないように見えますが、

  • どの財産を取得するのかが特定されていない

  • 不動産が含まれる場合、登記実務上支障が生じる

など、実務上は重大な問題を含んでいます。

また、2019年の民法改正により、自筆証書遺言保管制度(法務局による保管制度)が創設されましたが、
それでもなお、内容の不備や表現の曖昧さまで補正してくれるわけではありません。

したがって、遺言書の作成にあたっては、

  • 相続実務・執行経験が豊富であること

  • 単なる作成代行ではなく、相続発生後を見据えた視点を持っていること

といった点を重視し、可能な限り公正証書遺言として作成することが望ましいと言えます。


まとめ ― 相続対策は「法」と「生前の姿勢」の両輪で

相続対策というと、遺言書や生前贈与など、制度面に目が向きがちです。
しかし、実務を通じて強く感じるのは、法的対策と同じくらい、生前の人間関係の築き方が重要であるという点です。

もちろん、基本的な対策として遺言書の作成は不可欠です。
その上で、

  • 日頃から感謝を言葉にする

  • 財産状況を可能な範囲で明確にする

  • 配偶者、近親者、身近な人を大切にする

といった姿勢こそが、結果として相続紛争を未然に防ぐ最大の要因となります。

相続は「亡くなった後の問題」ではなく、元気なうちから始まっている問題であることを、改めて意識していただければと思います。

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